それよりも皆さんにお伝えしたいのは、いつしかこのコラムを続けることが僕にとっての大きな楽しみになっていて、それはどこか遠くで読んでくれる誰かの存在をはっきりと感じることができたからだということなのです。
昔から、本を読むのが好きでした。
秀逸な表現、胸が高鳴るストーリーに出会うたび、自分もこんな風に書いてみたい、書けるだろかと漠然と考えることもありました。
でもやっぱりどこか自分の内面を掬いとり、誰かの目に晒すことへの抵抗が大きく、結局は頭の中で飼い慣らしておくことしかできませんでした。
他人の文章を読んでは、「こうしたほうがわかりやすい」、「あの表現の方が面白い」などと無責任な批評家を気取る自分に嫌悪感を覚えながらも、一歩踏み出すことがどうしてもできませんでした。
だから長年僕のことを取材し続けてくださっていた方に相談して、「とりあえず書いてみたら?」と言ってもらったときには、「やべえことになった、相談すんじゃなかった」と思いました。
そーゆーのってなんかこう下積み的な作業から入って、基礎をしっかり積み上げるうちに腕が磨かれていって、機は熟した!みたいな感じでいよいよ本格的にデビュー!って流れなんじゃないの?いきなりズブの素人が好きなように書いて炎上したらもう二度と立ち直れないっていうか字を読むことすらトラウマになって若者の活字離れを加速させる原因になりかねないんじゃなかろうか。いやまあ30過ぎが若者かどうかはこの際置いといて。
みたいな感情が5秒くらい脳内を全速力で駆け巡りましたけれど、全部飲み込んで6秒後にはやらせて欲しい旨をお伝えしました。
もちろん実際には丸投げされるようなことなどなく、僕が書いた原稿を経験豊かなライターのお歴々が隅々まで添削してくださって、世に出すうえでのリスクを排除していました。
おかげで僕は、とにかく好きなことを好きなように書き、問題となりうる部分を複数のプロに検出してもらい、実践的な技術を学びながら飛躍的な経験値の獲得ができる、夢のようなポジションを確立してしまったのです。
完全にチートですね。すべての新米ライターさん、ごめんなさい。