世のバスケットボール選手たちは一体なにを理由として引退するのか。
我々のような人種なら誰もがいつかは直面するその疑問は以前からずっと頭の中にあって、「体力の限界」、「普通の女の子に戻ります」、「我が巨人軍は永久に不滅」など先人たちの言葉を参考にしたとてその心境に共感するのはとても難しいことのように思えました。
もし、それ以上は続けることのできない大きな問題を突然に抱えこんでしまったとでもしたならば、この厄介ごとに思いを巡らせる必要もないのかもしれません。
それはある意味では楽チンとも言えますが、しかし要するに大怪我や大病を患うなどして五体満足なその後の人生を送ることができなくなってしまう可能性すらあって、それはさすがに勘弁して欲しいのでできれば穏便にことを済ませたい、でも自分の最後に向き合うのはしんどくて正直めんどくさい、まあどうせいくら考えたところで「その時」がこないと実際のところはわからないんだからとにかく先送りするに限る、とか言ってるうちに僕にもその時はやってきました。
先送りした先にいる未来の僕は間違いなく今よりも分別のある大人で成熟しているはずなので、きっとうまくやってくれるだろうと気楽に構えていましたが、もちろんそんなことにはならず、夏休みの最終日に宿題を片付けるようなスピード感で物事が進んでいきました。
最後のシーズン途中には自分の中で結論がでていて、でもシーズンが終わるまで「今年で最後の選手」として扱われたくはなかったため、誰かに打ち明けることはせず、来年以降もバスケットボール選手を続けていく人、を演じていくことにしました。
そんな気持ちを知ってか知らずか、畝挟ストレングスコーチや田代キャプテンが「(一般的に選手が)引退するのはどういうときか」などとタイムリーな話題をぶちこんでくるので、もしや自分はサトラレになったのでは?とこれからの人生に不安を覚えましたが、とりあえず「飽きたら辞めるんじゃない?」とかなんとか誤魔化しておきました。
サトラレではなかったとしてもシーズン終了後の挨拶で意向を伝えたところ、「なんとなくそう思って見てた」と何人かの方からお言葉をいただいたので、演技の才能に限界を感じ、ハリウッド進出の夢は諦めることにしました。
ここまで読まれた読者諸賢におかれましては、結局なんでやめたん? とお思いのことと存じますが、このコラムでは詳細について語ることを控え、後日改めてバスケットボールスピリッツか週刊文春のどちらかより公開される予定の『石崎巧衝撃独占インタビュー』に譲ることとします。
長くなりそうですし。
自分のことを自分で語るのはけっこう苦手だったりするので、信頼のおける方にお話をして、整理してもらうほうがよほど伝わりやすいと思うのです。
そんなわけで興味がおありの方は、是非そちらをご覧になっていただければ嬉しいです。