男には泣いていい瞬間が三つある。
一つ目は生まれた時。
二つ目は大切な人をなくした時。
そして三つ目は、ヴァイオレットエヴァーガーデン七話、十話、外伝、あの花最終話、コードギアス二期十三話、最終話、SHIROBAKO二十三話、とらドラ十六話、十九話、二十四話、四月は君の嘘十三話、最終話、劇場版マクロスF、響けユーフォニアム二期十話、を観た時だ。
なお、おトイレとパパの胸の中で泣いた場合はカウントされない。
生涯で三度しか泣くことを許されないなんて男はつらいよ、生まれも育ちも葛飾柴又、フーテンの寅と発します、みたいな心持ちであったが、この程めでたく四つ目の瞬間が認められる運びと相成ったのでここにご報告したい。
それは、劇場版ヴァイオレットエヴァーガーデンを観た時、だ。
この作品を鑑賞したが最後、涙腺という概念は跡形もなく消え去り、眼球はただひたすら水を垂れ流すだけの器官へと成り下がる。
ヴァイオレットエヴァーガーデン以降、映画館に立ち入ることにトラウマを覚えるほどの暴力的な感動とは同僚である田代の言だ。
僕といえば、観賞後に放心状態でイオンモールを彷徨っている時に見かけた、足をおっ広げただらしない格好でベンチに腰掛けている女子高生に対し、「少女よ、ヴァイオレットちゃんのように生きたまえ。」と心の中で説教したりした。
映画館に足を運ぶなんて随分と長いことしておらず、今回も配信待ちを決め込むつもりであったが、なんとなく思い立って観に行ったのは結果的に良い判断だったといえる。
スクリーンの前に居並ぶ僕を含めた有象無象、という環境は感情にブレーキをかける作用があり、そこそこ年のいったおっさんが公衆の面前で涙する失態を防ぐ一助となるからだ。
映画が終わって明るくなったら、けっこうな大男でそれなりにガタイのいいアラフォーが目を真っ赤に腫らして鼻をズルズルやってました、なんていうのはもはや職質案件でもおかしくないので、環境の力を借りて必死に堪えた。
まあ無駄でしたけどね。
めちゃくちゃ泣いたし、なんなら周り全員泣いてたから安心して放水できました。
途中でめちゃくちゃいびきかき出した人がいて、これまでに経験したことのない怒りを覚えたけど、そんなことすら綺麗さっぱり浄化されるほど号泣しました。
必死で堪えてこれなので、これがもし自宅の完全にリラックスした状況であったなら、体中の水分全部持っていかれてた自信がある。
石崎の水ぜんぶ抜いてみたところで加齢臭強めのミイラが一体出来上がるだけで、環境になんらいい影響を及ぼすことはないので、京アニさんには深く反省していただきたい。