やっとの思いで声を届けられたとしても、そこからさらに聞き返されることが多かったりする。
これは僕自身認めるところだけど、そんなに滑舌がよいほうではないのでよく言葉を噛んでしまう。
頭の中に浮かんできたイメージをちゃんとダウンロードする前に喋りだすと大体そうなる。
でも、言いたいことを整理して噛まずに最後まで喋り終えたとしても、4割5分くらいは聞き返されたりする。
この「喋ったら聞き返される」業界ではイチローよりも打率が高いので、僕が代わりに国民栄誉賞を受け取ってもいいんじゃないかなと最近は思い始めた。
僕の中では一字一句、はっきりと喋っているつもりでも会話をしている相手によると、こもっていて聞き取りづらいらしい。
いやまあ実際はそんなに一字一句はっきりと発音してないけど。
声出すのめんどくさいし。
喋るのは嫌いじゃないけど声出すのはめんどくさい。
自分の喋ってる内容が長くなってくると疲れてきて途中でやめたりする。
どなたかこの病気の名前をご存知ではありませんか。
声が通らない、声を出すのがめんどくさい。
こんなことを言うと仕事に支障があるのでは?と心配になる方もいらっしゃるかもしれない。
いないと思うけど。
でも大丈夫、全然問題ない。
とある実験結果によると、言葉によって他者に伝えることのできる意志は三割程度しかないらしい。
それ以外は非言語コミュニケーションと呼ばれるものによって伝達される。
つまりは表情とか態度とかのほうが相手に自分の考えを届けるうえでよほど重要というわけだ。
それでなくても琉球のホームゲームなどは大変に盛り上がるので、どんなに野太い声の持ち主でも通りはしない。
だからご安心ください、石崎は今日も元気です。
むしろ問題は、今まさに皆さんがお楽しみのこのコラムにこそある。
文字でしか表現することのできないこの媒体では、僕の意思が三割しかお伝えできていないということになってしまう。
それにもし、僕のこの拙文にいたく感動して涙し、この奇跡を誰かと共有したいとしてブログなどで表明したとて、それは僕の意思の三割の三割、つまり一割ほどしか伝わらない。
胸の内からたぎる熱い思いを、魂が尽きるまで振り絞ってお届けしているにもかかわらず。
これは由々しき事態である。
声を出さなくても済むことが利点なのに、壊れるほど書いても1/3も伝わらないのでは考えものだ。
不純な感情が空回りしている。
ただでさえ「何を言っているのかわからない」と言われがちなこの書き物なので、今回は少しでも皆さんに伝わるように、簡潔に、一文で僕の想いを伝えておひらきとしたいと思う。
自分の声を聞くのも、世に出た自分の文章を読むのも、どっちも同じくらい恥ずかしい。
今回の引用元:『ONE PIECE』/尾田栄一郎/集英社
石崎巧
1984年生まれ/北陸高校→東海大学→東芝→島根→BVケムニッツ99(ドイツ2部リーグ)→MHPリーゼンルートヴィヒスブルグ(ドイツ1部リーグ)→名古屋→琉球/188cmのベテランガード。広い視野と冷静なゲームコントロールには定評がある。
著者近影は本人による自画像。