石崎巧の連載コラム 【404 Not Found】

第7回 『人には届けたい想いがあるのです』

10月1日の税率引き上げ後も、その現実を受け入れられなかった私はあのお馴染みのキャラクターと目を合わせることができなかったよ。彼は自分が11円になってしまったことに気付いているのだろうか。それとも、まだ自分は10円で世界中の人々に幸せを与え続けていると、そう信じているのだろうか。そんなことを思うだけで胸の中が言いようのない感情で満たされてしまうのだ。

しかし、もしも、自分が11円になってしまったことを承知の上でまだ、あの屈託のない笑顔を我々に向けてくれているのだとしたら。君ならどうする。

私は会いに行ったよ。10月1日のうちに、というわけにはいかなかったけれど。私にも気持ちの整理が必要だった。数日の時間を経て、ようやく意志が固まった。彼の新しい門出を見届けるべくコンビニへと出向くと、いつもと変わらないあの片隅で笑顔を振りまいていた。

私はそこで衝撃的な事実に出くわした。いや、冷静に考えれば当たり前のことだったのだ。

彼は、まだ10円だった。

勘のいい君のことだからとっくに気がついていたかもしれない。生活必需品には軽減税率が適用されるべきなのだ。うまい棒は、石崎巧選手の背番号入りグッズと同じか、ひょっとするとそれ以上に我々の生活に強く根差している。税率が8%のまま、商品価格10円を保てていたのは必然だ。

だが、ことはそれだけにとどまらない。これは商品陳列棚に貼られていた値札なのだが、見てもらいたい。

残念ながらめんたいこ味は売り切れていた。いや、そうではない。

私はてっきり、10円の8%の消費税は0.8円なので1円未満を切り捨てているものなのだとばかり思っていたが、そうではなかったのだ。

彼はアンパンマンよろしく自分の身を削り、どうにかうまいことやって税込での価格を10円としていたのである。

これにはさすがの私も脱帽した。

てっきり複数本のうまい棒を購入すれば、それまで眠れる獅子であった消費税を起こしてしまうことになるのだとビクビクしながら日々を過ごしていたが、そんな心配はいらなかったのだと知った。

 

 

2本買っても、

 

 

3本買っても商品が消費税をうまいこと吸収して、1本10円の聖域を死守している。

 

これを快挙と言わずしてなんというだろう。いつからこの体制をとっていたか定かではないが、我々は水面下の消費税に屈して1本ずつうまい棒をレジに持っていく必要などもうどこにもないのだ。これは革命と言ってもいい。

長くなってしまったが、君だけにはどうしてもこのライフハックを伝えておきたかった。

 

消費税恐るるに足らず。

うまい棒は我々と共にある。

敬具

 

追伸

ちなみにこの日、北谷町でうまい棒を根こそぎ買い漁る謎の男の目撃証言が相次いだが、犯人はもちろん私だ。

 

 

石崎巧
1984年生まれ/北陸高校→東海大学→東芝→島根→BVケムニッツ99(ドイツ2部リーグ)→MHPリーゼンルートヴィヒスブルグ(ドイツ1部リーグ)→名古屋→琉球/188cmのベテランガード。広い視野と冷静なゲームコントロールには定評がある。
著者近影は本人による自画像。

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