なかなかバスケの話題を肴に呑む機会がなく、かなり時間が空いてしまった。昨年のワールドカップでともに戦ったメディアの皆さんと、久しぶりにクラフトタップビールを楽しむ会が開かれた。国内外ブリュワリーのクラフトビールを楽しめるそのお店は、平日ながら盛況だった。
豊橋市総合体育館で行われたデビュー戦へ足を運んだ某記者が、「久しぶりにワクワクする選手」と切り出す。三遠ネオフェニックスの特別指定選手、河村勇輝という新鮮なネタで盛り上がる。昨年のウインターカップでは優勝した福岡第一高校が話題を独占し、その中心にいたのも河村だった。そんな記憶に新しい高校No.1プレーヤーが、3ヶ月限定の特別指定選手とはいえ、プロの世界に飛び込んだことにワクワクさせられるのも無理はない。2戦目以降の活躍はさらに驚かされる。千葉ジェッツ戦は21点、続く新潟アルビレックスBB戦は初先発を任され、その期待に応えるように24点を挙げ、あっさりとキャリアハイを更新した。
「もっとアシストがついていても良い」という意見に対し、「まだ合流したばかりだから」とこれからチームケミストリーが上がって行くことへの期待論で片付けようとする。しかし「プロなんだから、高校生のパスをしっかり取って決めてくれくれないとかわいそう」という指摘もごもっともである。新潟戦は読みが良いディフェンスから4スティールをマーク。「プロなのに簡単にパスカットされていた」と言ってはみたが、プロと高校生のどっちの次元で語れば良いのか、酔いとともに分からなくなっていった。
プロの水に慣れ、成長する機会にするのが特別指定選手制度である。しかし、河村のケースはその逆を走っている。3勝しかしていない三遠にとっては大きな補強となり、豊橋市総合体育館を満員にするほどの注目を集める。今週末は、東地区首位の宇都宮ブレックスと対戦。誰とマッチアップするだろうか?
「テーブス海? まだディフェンスが宇都宮のレベルに達していない」
「鵤誠司? フィジカルvsスピード?」
「ここは遠藤でしょう!」
宇都宮のディフェンスの要である遠藤祐亮にマッチアップされたときに、河村がどのようなプレーをするのかを考えただけでワクワクする。止められて当たり前だが、これまでの3戦同様に想像を超えるプレーをやっぱり期待しちゃう。
日本代表のフリオ・ラマスヘッドコーチも河村に期待を寄せている。しかし、「慌てずに彼なりの時間で成長して欲しい。みんなで温かく見守ることが大事」と釘を刺したように、まだまだ身体ができていない高校3年生であり、これからが本当の成長期を迎える。
この原稿を書いている1月31日正午時点で、宇都宮戦が行われる2月1日(土)は全席完売、2日(日)もチケットは残りわずかとなっている。会場は2006年世界選手権(現ワールドカップ)が行われた浜松アリーナであり、どれだけ集客数を伸ばすかも興味深い。会場ではオクタゴンブリューイングなるチームオリジナルビールが販売されるようだ。ほろ酔いでバスケを観る ── なんとも贅沢な週末を楽しんでほしい。
文・写真 泉誠一
試合写真提供 B.LEAGUE