もう一つ、東芝神奈川こそプロだと思わされる逸話がある。
シーズンを迎える前、社長をはじめとした要職の方々を前に挨拶する恒例行事があるそうだ。勝てなかった時代は、「いつまでもチームがあると思うな」という容赦ない言葉を浴びせられたと言う。
勝つか──、負けるか──。
母体企業が支える企業チームも、スポンサーが支えるプロチームもその目的に変わりはない。追い詰められた状況を作り、闘争心を掻き立てながらトップレベルをキープできる環境作りこそが求められる。
厳しい運営状況が後を絶たないプロチーム
過去、企業チームが母体企業の経営難により、休部・廃部を余儀なくされてきた。同じようにプロチームが消滅に追い込まれた事実もある。開幕したばかりの今シーズンも、すでにチーム運営が厳しいという話が耳に入ってきている。これは、オフシーズン中から毎年のように聞かれる話題だ。
チームを永続させるためにも統一プロリーグでは、単純に合併したり簡単に増やすのではなく、厳しい審査を設けてふるいにかけた方が健全だろう。
手をつないで、みんなで一緒にゴールする運動会のごとく、下のレベルに基準値に合わせる必要はない。10年が経つbjリーグのサラリーキャップが上がらないのも、新規参入チームに合わせているからであり、本来は年々上昇して然るべきこと。それこそが選手やチームにとってのモチベーションとなり、プロ選手を目指す子どもたちにとっての夢となる。
このまま行くと、2016年に始まるファーストシーズンは約40チームからスタートするそうだ。チーム数が多い分には、バスケを生業とする裾野が拡大するという良い面もある。しかし現状を見ると、選手やコーチ、レフェリーのレベルが薄まってしまっている感が否めない。
説明会で、丸尾理事長は「JBAのガバナンス」を強調していた。FIBAに言われるがままに、2つあるものを1つにする行為は、いつまでも平行線を辿り、なかなか出口が見えない。40チームに増えたところで、リーグ戦の対戦カードに新たなる刺激を見出すことはできるだろうか。優勝争いも、いずれかのリーグだけになってしまっては何も変わらない。
今のままNBLとTK bjリーグの2つのリーグをライバルとして煽り、それぞれのリーグで切磋琢磨させた最高のチーム同士が日本一を争う。コート外でも集客数や利益で激しい競争をさせながら、一定レベルをクリアできなければ淘汰する。その基準をJBAがガバナンスを持って示すような道は無いものか。
企業チームとプロチームのいずれにも、メリットとデメリットがある。日本における他のプロスポーツを見ても、企業に依存しているチームは多い。欧米のスポーツビジネスの成功例に当てはまらない点も、日本の風土にはある。しっかりとしたビジョンを持って見極めながら、世界に誇れる日本らしい統一プロリーグの在り方を迅速に見つけてもらいたいものだ。答えはとてもシンプルであるような気がしてならない。
JBA
TK bjリーグ
NBL
文 泉誠一