「あのときも良い選手はいると思ってたけど、2年目にニック(・ファジーカス)や辻(直人)、マドゥ(ジュフ磨々道)が入ってきて強くなった。若い選手を試合に使いながら成長していったというのがあったので、やっぱり選手は試合に出ないと成長しないんですよね。今日はターンオーバーが多かったし、クロージングは昨シーズンも課題だったんですよ。そこをコントロールできるようなチームになればいいし、バスケットってこういうものだよ、試合に勝つってこういうものだよというところを若い選手たちが理解していってくれれば、もっと上を目指せる。Bプレミアでプレーしたいという選手も当然いるので、それが身につけば可能性はもっと広がると思います」

ただ、選手が成長すれば別の問題が生まれる。どの選手もよりレベルの高い舞台を目標にしている以上、B.PREMIERなどへの戦力流出も金沢としては避けられず、場合によってはチームを作り直す必要も出てくるだろう。それは最高峰カテゴリーでないB.ONEの全クラブが必ず直面する壁であり、「東芝は企業チームで移籍はほぼないから、ちょっと長いスパンでチームを作れたんですけど、プロは移籍も絶対にあるし、チームの成熟度が増していく中でメンバーが変わる難しさはあるんだろうなと思ってます」と予測もしているが、裏を返せば、この言葉は北HCが中長期的なチーム作りの構想を持っていると受け取ることもできる。
白黒はっきり分かれるプロスポーツの世界は、勝利を目指すことが大前提。勝つことでしか評価されない側面があることも事実であり、昨シーズンB3プレーオフに進出したことで期待も高まっているはずだ。しかし、北HCが就任時にクラブを通じて発表したコメントで、真っ先に言及していたのは「地方創生」。Bリーグのベースにもある地域密着を追求していこうという姿勢は、地元出身であればより強くなる。自身がこれまで懸命に向き合ってきたバスケットでそれができることは、何にも勝るやりがいだ。
「もちろん、やるからには勝ちたいし、ファンの皆さんも期待されてるので、その期待に応えたいという想いもあるんですけど、今までバスケットの世界にいてHCやGMもやってきた側からすると、やっぱりそんな簡単じゃないんですよ。上手くいかないことは絶対あるんです。でも、目標に向かってやり続けることが成長につながると思ってますし、勝つか負けるかしかない中で、負けても『見に来て良かった』とか『金沢サムライズのプレーを見て私たちも頑張ろうと思った』とか、メッセージが届くようなプレーや振る舞いを石川県の皆さんにお見せできたらと思います。それが僕らの使命だったり存在意義、存在価値だと思うので、それができるように取り組んでいきます。僕はそのために来たので、バスケットボールを通じて石川県が盛り上がるように、精一杯頑張るだけです」

bjリーグ時代のクラブ創設から11年の間には、経営難に伴うB3降格や能登半島地震などの苦難に見舞われてきたが、B.革新を機にクラブはチーム名表記も武士団からサムライズに変え、再生への第一歩を刻み始めたところだ。その第一歩が力強いものとなる予感を、北HCは漂わせている。
文・写真 吉川哲彦











