人間はよくわからない状態が好きじゃない。意味のあるまとまりが大好き。散らかった情報をつなぎ合わせて筋道をたてる創作がとても得意。
それは具体的な詳細が少なければ少ないほどうまくいきやすくて、そして実際の現実から離れやすい。
だから試合直後の選手やコーチ(や解説者)の言葉が、常にバスケットの真実を反映しているとは思わないほうがいい。
感情の昂った状態での判断が最善である可能性は低いし、コート内(外)で得られる情報には著しい偏りがあることがほとんどだ。
家に帰ってビデオを見返したら真逆の印象だった、なんてよくある話。
アレックス・カークの日本国籍取得は琉球ゴールデンキングスに連覇を確信させるに十分な知らせだった。
しかし最終的にシーズンが幕を閉じるまで周囲が期待したほどの猛威を振るうことはなかった。
むしろシーズン途中の戦略的修正によって生じた違和感を払拭できないまま、6年続いていた西地区優勝を逃してしまった昨シーズンについて、牧隼利(大阪エヴェッサ)は「答えを見つけきれなかった」と語る。
「果たして3ビッグラインアップで臨むことがチームとして望ましいのか。そこに対する不満を日本人選手が持つこともありますし、逆も然りで、なんで3ビッグで押し切らないんだっていう外国籍選手たちの考えもありますし。これは琉球に限らず、Bリーグ全体で起きていることかもしれないんですけど。結局、振り切ることができなかったかなと正直思ったりしています。」
ファイナルから2ヶ月が経過したある日のインタビュー。
検証に費やす十分な時間が確保できればそれだけバイアスから逃れられるとも言い切れないが、彼の言葉には考えうる様々な要因と向き合った痕跡が見られた。
バスケットボールコート内が効率や数字に傾くにつれ、プレーヤーの感情のゆくさきを案じてしまう。
そのような潮流の中にあって、根源的な細部にまで視野を広げられる人間の存在にまずは安堵する。
「メンバーがいるがゆえに、メンバー構成によってどう攻めていくかというところ(が難しかった)。特に新しく加入したヴィック・ロー選手とかカーク選手が帰化したりとか、今までやりたかったキングスのバスケットとはまた違う路線を走らないといけなかったように感じていて。
松脇(圭志)とか荒川(颯)とかのディフェンスは(相手からすれば)すごく嫌だと思いますし、ヴィック・ローのように機動力のある選手がいたので、あえて僕たちの出る時間帯は積極的にゾーンプレスだったり、トラップ的なのを仕掛けていこうみたいな。そういった仕掛けはシーズン終盤戦のセカンドユニットの時間にやっていました。」
戦略的にポジションレスが採用されていたとて、コートの中では誰かが決定をくださなければものごとが進まない。
セカンドユニットで主にその役割を担った牧は「今思い返せば昨シーズンは戦術的な話をする時間が増えていたなって思いました。」と本人も言うとおり、チームに改善の糸口を示した。