歴史を継承し、三河のアイデンティティーを築くリッチマンヘッドコーチ
28年間、アイシン時代からチームを率いてきた鈴木貴美一ヘッドコーチに代わり、NBAワシントン・ウィザーズからやって来たライアン・リッチマンヘッドコーチが指揮を執っている。「シーホース三河は素晴らしい歴史があり、組織としても素晴らしいチームである」と過去を継承し、NBAで培ってきたものを還元しながら新たな歴史を切り拓く。先月のバイウィーク期間中は、「選手もスタッフも含めて、一つひとつのレベルを1段階上げるということに注力した」と強調するリッチマンヘッドコーチは、フロントスタッフにも同じように変化を求め、強固なチーム作りに勤しんでいる。
タフに守って相手のミスを誘うディフェンスをベースとし、「フルコートディフェンスが自分たちの武器である」とリッチマンヘッドコーチも自信を見せる。SR渋谷戦は敗れたが、第2クォーターに点差を開いたのもフルコートディフェンスからだった。ベンチスタートの角野亮伍や中村太地はプレータイムこそ10分に満たず、目立つようなスタッツは残せていない。しかし、ディフェンスではその役割を全うできていた姿に、チームの成長が見られる。一方、そのディフェンスが効果を失えば、後半のように流れをつかめなくなる。その課題を払拭するためには良いオフェンスで終わることが大事であり、攻守ともにまだまだ発展途上段階である。
SR渋谷に敗戦後、「素晴らしい選手、素晴らしいコーチがいるチームに対して、やはり自分たちがやるべきことを40分間遂行し切らなければ勝つことができない。次のステップへ進んでいくためにも、学びの多い試合となった」とリッチマンヘッドコーチはすべてを糧にする。
「一つひとつのポゼッションにおいて、すべての選手にそれぞれの役割がある。それを遂行できるかどうかが、最終的な勝敗に関わってくる。勝利するためには、自分の役割を理解してやりきること。それが、三河のアイデンティティーとなる」
昨シーズンまではウェス・アンセルドJr.ヘッドコーチの下、ウィザーズのアシスタントコーチだった。目下16連敗中(※3月7日時点)、不名誉なチーム記録タイに並んだお先真っ暗な我がウィザーズ。泥臭いプレーが魅力な選手たちが次々と放出され、全く未来も感じられない。そんな海の向こうの愛すべきチームの状況と三河の活躍を比較すれば、『なぜ、日本なんかに来たんだよぉぉ』とついつい妬んでしまう。ウィザーズがボロボロだからこそ、リッチマンヘッドコーチの手腕やその熱いフィロソフィーが、よけいにキラキラと輝いて見える。
文・写真 泉誠一