益子はトップチームの練習に参加しながら約半年を過ごし、遅ればせながらプロ契約を掴んだ。ところで、プロ選手ではなく、練習参加するだけの環境はどんなものなのか?
「他の選手と変わらず、一緒に練習できます。ただし、シーズン中になると、プロ選手は試合に合わせてトレーニングし、コンディションを調整します。でも、僕は週末に試合がないので、筋肉痛になっても問題ない。だから、毎日追い込んでいました。試合日は練習がない分、動けなくなってしまうので、ホームゲームのときは午前中にコーチ陣とワークアウトし、アウェーでみんながいないときはどこかの3×3チームや大学に行って練習していました。とにかく、いつ契約されても良いようにコンディションを整え、あと平日は練習後にスクールコーチをさせていただいていました」
プロと遜色ない環境でバスケができ、川崎の場合は衣食住も用意される。昨シーズンは京都でプレーしていたことで、B2などからの誘いもあった。「もちろん仕事なのでお金も大事ですが、それよりもプロキャリアを進んでいく上で自分が成長できるチームに行こうという思いが強かったです」とバスケ人生の中長期プランを考慮し、保証なき練習参加という選択をする。遠回りのようなこの決断だが、「自分が成長できないところへ行っても、ただもったいない時間を過ごすだけかな」と信念を貫く。その言葉どおり、複数のコーチが入れ替わり立ち替わり指導してくれる贅沢な練習環境が益子を成長させた。
「バスケに関しては、本当に価値観すべてが変わりました。プレーの一つひとつに対して自分とは違う見方があり、いろんな角度から学ぶことができました。バスケに対する考え方などが、まるで違う世界に来たと感じるほど、知らないことを多く教えてもらいました。先輩たちは各方面のスペシャリストばかりなので、プレーはもちろん行動を見ていても、本当に毎日のように驚かされています。(篠山)竜青さんはチームの雰囲気に関わらず、言葉でもプレーでも率先して引っ張っています。ディフェンスをはじめ、フィジカルかつアグレッシブにプレーすることは自分もマネできる部分です。長谷川(技)さんに関しては、文句のつけようのない3ポイントシュートがあり、今は43%ぐらい(42.5% ※3月2日現在)の確率で決めています。スカウティングされながらもシーズンを通して決められるのは、ちょっとワケ分かんないです。自主練やワークアウトを見ながら、マネさせてもらっています。ただ、(藤井)祐眞さんみたいなドリブルでメイクするタイプは本当にすごいなと思いますし、ちょっとマネできないですね(笑)」
練習参加からチャンスを掴んだ益子だが、学生時代を振り返れば、いつもビハインドからのスタートだった ──
後編「大事なのは、バスケ以外の日常を疎かにしないこと」へ続く
文・写真 泉誠一
写真 B.LEAGUE