日本に戻りたかった(中編)より続く
日本と世界の大きな違いは、ペース。
つまり試合展開の速さのことだ。
実はこの「ペース(pace)」はスタッツの1項目として数値化されている。
ざっくり説明すると、攻撃回数を試合時間で割ることで1試合で何回くらい攻めるチームですよ、多ければ速いチームですよ、という指標としている。
千葉ジェッツのpaceは、5節終了時点で70.38、24チーム中20位だ。(計算、めんどくさいなあと思っていたら「B.League Analytics」というサイトで公開されていた。管理人は慈悲の心に溢れた人物に違いない。)
だが、必ずしもこの数字がチームのスピードを表すわけではない。
それどころかこのpaceの低さは、むしろ千葉Jの「ペース」の速さを示しているとも言える。
千葉Jと対戦するチームはフルコートで展開されるプレスディフェンスに苦しみ、1回の攻撃にかかる時間が長くなる。
自チームの攻撃回数を増やす一番簡単な方法は、相手チームの攻撃回数を増やすこと。
極論すれば、ディフェンスをせず短時間で相手に得点を許すことで、paceは増えていく。
もちろん、パトリックHCの求める「ペース」はそのようなものではなく、ディフェンスの激しさを含んだ「ペース」の向上を目指す。
しかしバイウィーク時点でリーグトップタイの勝率をあげていてもなお、その完成度にはまだまだ改善の余地があるようだ。
「プレシーズンには選手が10人も揃わなかったんですよ。怪我人がいて、ギャビン(エドワーズ)とユウキ(富樫勇樹)がいなくて。だから5対5で練習ができなかった。前のコーチのシステムと私のシステムが全て違うわけじゃないけれども、やっぱり私の強調するハビットと、前のコーチが強調していたハビットは違う。それは1週間とか2週間で変えられるものじゃなくて、6ヶ月とか1年間、2年間で変えていくもので、そのことはドイツの時の経験で気付いていました。(怪我人と代表選手の欠員で)今も練習は8人とかでやっていて、なんとか2対2とか3対3でやっています。でも本当は5対5で練習して、分析映像で勉強して、ハビットを変えていきたい。それは悪いハビットだからとかではなくて、前のコーチのハビットとか、選手のこれまでの習慣に気付いて、意識して変えていかなければいけないことなので、時間はかかります。
ドイツでもそうだったけど、今の段階でもある試合では理想的にできることもある。でも5人ともがうまくローテーションをしないとディフェンスは機能しないし、フルコートプレッシャーはポイントガードだけがプレッシャーをかけていても機能しない。5人とも同じハビットを作るにはやっぱり時間がかかる。オフェンスにしても、難しいのはバックトゥバックのところで、選手は非常に疲れるんですよね、土曜日と日曜日の試合。これは怪我の心配からヨーロッパでは絶対ないもの。だから私もアジャストしないといけないところがあります。特に22歳から25歳くらいの選手はハビットを変えようとしたら変えやすいと思う。でも30歳の選手とか、35歳の選手は自分がずっと使っていたバスケットのハビット、スキルを自分で変えようとしないと変わらない。それも一つの難しいところだと思います。」