一度上手くできたからといって、次も同じようにできると考えるのは早計だ。
人間の行動の結果は、平均に回帰していく。
平均のレベルが高くなければ成功したとしても、それはたまたまに過ぎない。
そしてレベルを上げるための技術習得には反復と正しいフィードバックが、つまり時間が必要だ。
A東京のこの変化が初めて起こったものではないにせよ、十分に自分たちのものとしていたわけではないようだった。
第3戦は島根が制し、セミファイナルへと進出した。
前日の試合でA東京の変化に対して動揺があったのか、本来ではあまり見られないような状況判断のミスが目立ち思わぬ大差となったが、その日の後半には修正がかかっていた。
進化したA東京と復調した島根の対戦は、互いに譲らない見応えのあるゲームとなった。
最終的には、A東京がまだ定着していないリスクの取り方を持て余し、いつもより少しだけシュートが入った島根が勝った。
試合を見ながら、弊サイトにて掲載されているアレックス・カークのインタビューが何度も思い起こされた。
『周りの選手を見ながらも、アルバルクではだいたい “プレー” で動いています。』
『ただ素晴らしいチームというのは、その両方ができるのかなと思っています。 “プレー” でおこなうことはもちろん、周りの選手も含めて、ディフェンスのシチュエーションを見て、ポップをダイブに変える、もしくはダイブをポップに変えることができるのでしょう。』
個人的には、得点期待値という概念もそのまま鵜呑みにしてはいけないのではないかと思っている。
A東京であれば田中大貴のように、期待値の低い中距離のシュートが得意な選手はたくさんいる。
最近では試合のスタッツにおいてオフェンスリバウンドが重要視されがちだが、オフェンスリバウンドが多いということは、それだけシュートが入っていないという意味合いも持つ。
なにか一つにこだわり、それによって大切なものを見落とさないためにも、こだわらないことにこだわってみても良いのかもしれない。
文 石崎巧
写真 B.LEAGUE