「本音を言えば来シーズン、また再来シーズンもこの体育館でブースターさんと一緒に試合をしたかった」という安田部長は、試合後のセレモニーで来場者や関係者に向けて涙ながらに感謝の意を述べた。意欲的に取り組んできた地域活動が志半ばに終わってしまう無念も、おそらくは心中を駆け巡ったことだろう。しかし、昨シーズン見事にリーグ優勝を果たしたように、プロがしのぎを削る世界で光を放ったという実感も安田部長にはある。
「昨年の9月24日に活動終了の発表をしたときに、ツイッターにいただいた返信内容が全てなのかなと思います。B2に昇格した越谷の元選手などからもコメントをいただきましたし、B3で戦ったことのあるチームのファンの方からは『面白いバスケットだった』とか『見ていてエキサイティングでした』といったことを言っていただけて、少しB3に爪痕は残せたのかなと思いましたね」
もちろん、選手にとって社業をこなしながらのプレーは困難が伴うことも多かったに違いない。しかし、「上下関係がないというかみんなフラットで、言いたいことも言い合える」と証言する石原を筆頭に、選手たちはアイシンでプレーすることに充実感を感じ、楽しんだ。「やるからには負けたくない」(宮脇)と強い意志を持って取り組んだことが成果を生み、その成果がまたモチベーションとなった。
「仕事との両立に関しては自負しているところもあります。練習量が少ないから負けたという言い訳はしたくなかったので、いかに効率良く練習できるかというところは日々努力して、それで結果を残せたことは自信になりましたし、嬉しさにつながりました」(石原)
最後に、今回フォーカスした選手2人からの感謝の言葉を記しておきたい。今後については現時点でほとんどの選手が白紙。シーズン閉幕後には引退を選ぶ選手もおそらくいるだろう。しかし、例え本業がサラリーマンという肩書きであったとしても、後押しを意気に感じてハッスルプレーを生み出す彼らの姿勢が、プロアスリートのそれと全く遜色ないものであったことは心に留めておきたい。
「会場に足を運んでくださった皆さん、B3TVを見てくれた皆さんの応援が本当に僕たちの力になりました。ありがとうございましたと伝えたいです」(石原)
「親や地元の友達も見に来てくれましたし、空回りすることもあったんですが(笑)良いところも見せることができて、ここでプレーできて良かったです。小さい体育館ですが演出もすごくしっかりやっていて、いつも来てくれるお客さんがいる中でプレーできたことが楽しかったです。本当に感謝しています」(宮脇)
文・写真 吉川哲彦