東海大学卒業後、リンク栃木ブレックス(現:宇都宮ブレックス)と育成契約を交わした多嶋朝飛は、2年後の2013-14シーズンにレバンガ北海道に移籍した。以来8シーズン、帯広市出身の “道産子プレーヤー” としてチームの顔となり、地元ファンに愛され続けてきた。「きっと朝飛はキャリアの最後まで北海道にいてくれるはず」。多くのファンの胸にはそんな思いがあったのではないだろうか。それだけに多嶋の名前が移籍リストに載ったときの驚きの声は予想以上に大きかった。プロ選手として10年のキャリアを積んできた多嶋がなぜ移籍を決断したのか。北海道で過ごしたシーズンを振り返りながら、レバンガに対する愛着と選手としての葛藤、さらに新天地に茨城ロボッツを選んだ理由や今季に懸ける思いなど時間をかけてたっぷり語ってもらった。1つひとつていねいに、正直に答える言葉から伝わってきたのは自身が見据える “これからの多嶋朝飛” だ。
プロになって10年。チャレンジするなら今しかないなと思った
「周りの皆さんが僕に抱いているイメージと同じで僕自身このままずっと北海道でプレーするのかなという感覚はありました。道産子プレーヤーとしての意味も大事にしていたし、応援してくださるファンの温かさもすごく感じていたし。そのチームから出て、北海道(という土地)を離れることについてとても複雑な感情になったことも事実です。けれど、Bリーグが始まって、今シーズンは特に多かったんですけど、この選手はもう動かないだろうなと思われていた選手もどんどん動くようになってきました。その1人ひとりに『なんで移籍したの?』と聞いたわけではないですから、僕の勝手なイメージかもしれませんが、やっぱりBリーグ発足から時を経るごとにクラブも選手もそれぞれのステップアップをより真剣に考えるようになった気がするんですね。そのことでリーグがすごく活性化していったイメージがあります。
ではその中で自分は選手としてどうだろうと改めて見つめ直したとき、なんて言えばいいか、こうモヤモヤした思いがあることを否定できませんでした。北海道で8年間プレーしてきて、気が付けば33歳。あと何年プロとしてやっていけるのだろうとか、やっぱり考えますよね。北海道にはものすごく愛着はあるけど、せっかくできたBリーグというすばらしい場所でもう一度チャレンジしてみたいと思いました。プロになって10年目というのも1つの区切りだし、チャレンジするなら今なんじゃないかと。それが(移籍を)決断した理由です」