「新規のお客さんやギラギラした中学生が観に来てくれるためには、どうしたら良いかということをすごく考えています。選手がもっとハングリーになり、日本人が当たり前にダンクするレベルの高いエンターテインメントを見せられるような基礎を作るのが今いる僕らの役割です。リーグのレベルを上げ続けなければいけないし、そこに向かっていくための今は準備段階です。そのためにも子どもたちがもっと観に来たいと思ってもらえるような会場作りと、試合のエンターテインメントを統括してできるようにしたいとは思っていますが、まだその答えは出ていません」
ムードメーカーとしてのポジションを確立
大宮の考えるプロ意識とは、「コーチに『今行けるか?』と言われれば、すぐにプレーできること」と実に明快な答えが返ってきた。
「一番わかりやすいのが富樫(勇樹)です。いついかなるときでも結果を出せる。おもしろい本(「想いをカタチにする」ポジティブ思考)を出しましたけど、どんな気持ちだろうがコートで結果を出すのがプロ選手です。ただ、そこまでに行くためには、世界でも1%しかいない何かを持った人間になるか、または実力をつけて信用を勝ち取るしかないです」
継続することの大切さを強調する。「僕の場合はとにかく明るく、ポジティブに意見を伝えていくことを継続しています。真面目な顔をしていれば試合に勝てるわけではないことを今、千葉で証明しています」とムードメーカーを買って出た。それだけではない。自分のメンタル状態に関係なく、常に明るく照らし続ける「太陽みたいなもの」を実現している。
バスケの試合はゲームと呼ばれるが、「やっぱりゲームでしかないし、楽しまなければダメです」という思想を持つ。うまくいかなかったときにこそ「ゲームに負けただけであり、それをプロ選手としての糧にすれば良い。悪い状況でも、常に良い方に向かせるためのシーソーのようなバネになりたい」とテンションを上げ、チームのエネルギー源になっている。
「ただ、僕の言ってることはおかしいんだと思いますよ。本当はバスケで勝負しなければいけないんですけどね」と笑い飛ばす。これまでもムードメーカーではあったが、千葉に来て、「この仕事を認めて任せてもらえるようになってからですかね」と、今あるポジションを確立することができた。大野篤史ヘッドコーチやチームメイトだけではなく、運営スタッフやブースターも含め、大宮の仕事は千葉に欠かせないものになっている。
「明るい思考は、生まれたときから持っているものだと思っています」という大宮の実家はお寺さんである。引退後は「ここまで好き勝手にバスケをさせてもらったので、絶対に坊さんになるから心配しないでという約束もしています」と、家業を継ぐことが決まっている。しかし、それはまだ先の未来であり、今はまだまだ太陽としてまだまだチームを明るく照らし続けなければならない。
どんなに苦しい状況でも前向きにするためには、人一倍のエネルギーが必要であり、簡単なことではない。お坊さんのような温かい笑顔でこう締めくくった。
「すごい修行をさせてもらっていますね。ありがたいことです」
千葉ジェッツ #8 大宮宏正
ポジションはチームを明るく照らす『太陽』
前編 ハーレム・グローブトロッターズに誘われる!?
後編 一生ダンクし続けるというこだわり
文 泉誠一
写真 B.LEAGUE