── しみじみしたあとにこんな質問をするのもアレなんですけど、前から聞きたいと思っていたのは試合中にポイントガードが出すコールについてです。観客がざわめく会場であのコールは聞こえるものですか?
柏木 僕は今までコールする方だったのであまり気にしてなかったんですけど、2番をやり出してから結構聞こえないことがあるのに気づきました。人にもよるんですけどね。圭さんとやるときは普通にわかります。
五十嵐 選手によってコールするタイミングが違うので、えっ、そこで?と思うこともあります。
柏木 そういった意味ではサインは大事ですね。ジェスチャーも大きい。
── 逆に相手チームのコールとかサインもわかるものなのですか?
五十嵐 わかります。相手が自分たちをどう守ろうとしているのかなんていうこともわかりますよ。
柏木 基本、自分たちのコールもそうですけど、コールが聞こえたら選手はそれを復唱していくんですね。それと同じで相手のコールが聞こえた選手はそのフォーメーションとかを復唱して仲間に伝えていくんです。そういった伝達は結構ありますよ。
── なるほど。では、お2人に最後の質問をします。今までお話を伺って、ポイントガードが担う役割の大きさをあらためて感じました。その中でお2人が考えるポイントガードにとって1番大事なもの、1番必要なものはなんでしょう。それぞれ聞かせてください。
五十嵐 僕は『信頼』だと思います。選手やスタッフから信頼される存在であること、それがポイントガードとして1番必要なことだと思っています。
柏木 僕はね、勝っても負けてもガード次第というのがあるんですよ。ポイントガードを任されるようになってからそのことだけはブレずにあります。だからポイントガードに必要なのはゲームを支配すること。最近のバスケの流れで言えば、ポイントガードが積極的にアタックする、あるいはピック&ロールを使うのが主流になっています。もちろんそれはそれでとても大事なことです。だけど、それだけでは勝てないのがバスケットだと思うんですよね。それプラスチームを勝たせられる支配力、コントロール力を備えてこそ真のポイントガードと呼べるし、ひいては強いチームが出来上がるのだと思っています。
── それが先ほどの話にあった「1番ポジションはできるが、ポイントガードはできない」ということですね。残り10分、5分を任せられるかどうかという。
柏木 そうです。僕はそう思っています。その微妙な差を言葉にするのは難しいんですが。
五十嵐 ポイントガードは奥が深いですから。
── 今日は長い時間ありがとうございました。お2人には生まれ変わってバスケをするときもぜひポイントガードをやっていただきたいと思います。それぞれの希望は却下して。
柏木 ハハハハハ(笑)
五十嵐 生まれ変わる前にまず今、ポイントガードとして頑張ります!(笑)
新潟アルビレックスBB 五十嵐圭 × 柏木真介
ポイントガードに必要なのは『信頼』と『ゲームを支配する力』
part1「初のポイントガード対決はインターハイ」
part2「先輩から学んだものの上に自分のスタイルを構築する」
part3「ポイントガードはもっとも経験値が求められるポジション」
part4「苦しむチームを引っ張り上げるのはベテランの仕事」
part5「バスケットのプロとして今もプレーできることは幸せ」
文 松原貴実
写真 沼田侑悟