「今までボクは、スペインでプレーしていたときも元NBA選手だったり、ユーロリーグで“レジェンド”と呼ばれる選手たちと戦ってきた。もちろんスペイン代表として世界の選手たちと渡り合えてきたという実績もあるし、コートに入ってしまえば同じ選手だよ。彼らがスコアをしようと思えば、ボクを倒さなければいけない。それはオフェンスでも、ディフェンスでも変わりはない。コートに立てば同じ選手だ」
ここにセバスチャンの強さがうかがえる。ディフェンスやリバウンドなどフィジカルコンタクトのような目に見える強さもあるが、内面での強さ、自らに向けられたある種のプライドを感じることもできる。
それでも取材中に見せた“ウォーリアー”の一面はそれきりだった。話がコートの外に及ぶと、穏やかな表情で言葉を紡いでいく。
「バスケット以外の興行は、照明の使い方だったり、それぞれのチームのいろんな演出の仕方にも個性があって素晴らしい。リーグ自体もどうやって盛り上げようかと考えているし、そうした姿勢も素晴らしいなと思っているよ」
リーグ全体についてそう言及し、さらに選手をサポートしてくれるファンについてはより温かい気持ちを込める。
「ボクがスペインにいたときアウェイに行くとアウェイのファンしかアリーナにいなかったんだ。いや、厳密に言えば、アウェイに来てくれるファンもいたんだけど数は少ないし、たいていはアリーナの最上階で、しかも端っこに追いやられていることが多いんだ。でも日本だとアウェイにもSR渋谷のファンがいて、コートの近いところから熱い声援を送ってくれる。最初は少し違和感を覚えたけど、今では本当に素晴らしいことだと思っているよ。これはSR渋谷のファンに限った話じゃない。対戦チームのファンもボクらのホーム、彼らにとってのアウェイに来て応援しているところに、ボクたち選手はサポートされているな、愛されているなと感じるんだ。そこが、SR渋谷のファンはもちろんだけど、Bリーグ全体のファンも本当に素晴らしいと感じるところだね。Bリーグ全体が盛り上がっていくためにもそういった姿勢、どこに行ってもファンがついてきてくれるのはボクたち選手の励みになるんだ」
世界のどこであれ、セバスチャンをはじめとした選手たちは常に懸命にプレーをしている。それをサポートしてくれるファンがいるからこそ、選手たちはどんなときでも前向きになれる。タフな戦いは続くが、だからこそセバスチャンは初めての日本での生活を充実したものにできていると言える。
「ここまででも手応えは感じているよ。日本に来てからボク自身がハードに取り組んできた成果だと思う。シュートはもちろん決まるときもあれば、落ちるときもある。でもコートに立って、そのシュートを自分が放てる、そうしたプレーができることの喜びが一番大きいね」
サンロッカーズ渋谷 #2 セバスチャン・サイズ part3
「Bリーグからスペイン代表へ、そして東京オリンピックへ」 へ続く
文 三上太
写真 安井麻実