── なるほど。それにしてもこれまで指導者として歩いて来られた道を伺っていると、改めて積み重ねていらしたものの大きさを感じます。幅広い経験から得た引き出しの多さというか。
さあ、どうでしょう(笑)。とりあえず経験してきた分の引き出しは持っているつもりですが。女子を初めて見たときに“男子にはない良いもの”を感じたように、男子にも“女子にはない良いもの”があります。たとえばバスケットの醍醐味の1つであるパワーや迫力、それは女子とは桁違いです。今シーズンは最初からチーム作りに携われるので、私自身が男子バスケの魅力を楽しみながら、その中で『内海のバスケはこういうものだ』という色を出していけたらいいと思っています。
── 強豪チームがひしめく東地区は超激戦区であり、今季もタフな試合が続くと予想されます。内海さんが胸に掲げる今シーズンの目標はどういったものでしょう。
うちにとって今季も簡単な試合は1つもないと思っています。正直、今の段階で「目標は優勝です」とは言い切れません。でもね、チームは成長するんですよ。私が今、目指すのは「目標は優勝です」と胸を張って言えるチームにすること。もちろん、どこが相手でも勝利を目指すことは大事ですし常にそうありたいとは思いますが、私はまず勝つためのプロセスを大事にしたい。選手1人ひとりをどうやって成長させていくか、さらには選手たちと一緒にチームをどうやって成長させていくか。それがコーチとしてもっとも大事な仕事だと思っています。このチームはまだまだ伸びますよ。伸びて行く可能性を感じています。
── 以前、「現役を引退して来たときは右も左もわからなかった」とおっしゃっていた北海道が、今や第二の故郷になりそうですね。
いや、ほんとですね。縁あってこの北海道でまたバスケットに携われることは本当にうれしいです。
── 初めて北海道に来られたのはたしか30歳のとき。今は60歳になられました。
ハハハ(笑)。60歳になってもバスケットに関わっていたいと思うのは、やっぱり心底バスケットが好きなんでしょうね。私を必要としてくれたレバンガに感謝して今シーズンも精一杯頑張るつもりです。
バスケットボール温故知新 内海知秀
実るほど頭(こうべ)を垂れて
part1「時を経て、努力の結果を知ることもある」
part2「レベルの高い選手と競い合うことで“欲”が芽生えた」
part3「日の丸の重さを知る自分が代表を率いるという運命(さだめ)」
part4「女子には女子の、男子には男子のおもしろさがある」
文 松原貴実
写真 安井麻実