バスケットボール温故知新 内海知秀

実るほど頭(こうべ)を垂れて part3

── 今も忘れられないのは2004年の1月に仙台市で開催されたアジア選手権です。日本がアテネオリンピック出場を決めた大会ですが、準決勝の相手は予選リーグで32点差をつけられ大敗した韓国。その韓国をダブルオーバータイムの末に破った一戦は『仙台の奇跡』と呼ばれ伝説になっています。

あれは今思い返しても壮絶な試合でしたね。若い選手たちが本当によく頑張ってくれたと思います。

── 敗れれば3位決定戦でチャイニーズタイペイ(予選リーグでは延長の末敗戦)と戦うことになりますから、それも視野に入れて大山、浜口などのベテラン選手を温存する必要もあったのではと思います。が、起用した若手選手が躍動しましたね。

それまでは勝たなきゃいけない試合には、計算できて安定感があるベテランを起用していました。ところがあの試合の前に司令塔の楠田が熱を出して欠場というアクシデントに見舞われたこともあり、チームの組み立てを再考せざるを得なくなりました。スタートはベテラン選手がいい流れを作り、2Qからは永田睦子、矢野良子、立川真紗美といった若手メンバーが見事な働きで期待に応えてくれました。ああ若い選手というのはスイッチさえ入ればここまで力を出せるんだな、こんな爆発力を秘めているんだなと、コーチとしてそれに気づかされた試合でもありました。

── 韓国の粘りもすごかったですが、最後にそれをはね返した日本はさらにすごかった。

頑張ってくれた選手たちには本当に感謝しています。振り返ればいろんな運にも恵まれました。オリンピックのアジア出場枠が3チームになっていたのもそうですし、仙台で開催することができたのもそう。これはもう、仙台の協会の方をはじめ多くの方が動いてくれたおかげです。地の利というのは大きい。戦う者とすれば本当に心強い。そういったたくさんの人の尽力があの奇跡の一戦につながったんだと思っています。思い出すと、今も感謝の思いがわーっと湧いてきます。

part4「女子には女子の、男子には男子のおもしろさがある」へ続く

文 松原貴実
写真 安井麻実

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