その後、「5」まで伸ばした連勝は、もちろん伊佐勉ヘッドコーチが構築してきたディフェンスの意識改革が功を奏したからだろう。
しかしそれだけではない。
「一番大きな理由としては選手の層が厚くなって、タレント性も昨シーズンに比べて大きく変わったことです。まだまだそれぞれの役割について手探りなところもありますが、それを抜きにしても、タレント性や、お互いの競争心も高いと感じています」
昨シーズンからチームに加わったライアン・ケリーはそう話す。7人の加入選手がチームに刺激を与え、よりよいケミストリーを生み出しているというわけだ。
それは今シーズンのキャプテンに任命されたベンドラメ礼生も認めるところだ。
「新しく来た選手たちが前のチームで中心選手だったこともあって、雰囲気がとてもいいんです。一人ひとりが試合のポイントごとにしっかりしゃべっている姿が周りにも影響しているのか、誰かがしゃべるとほかの選手もしゃべるんです。誰か一人だけがしゃべるという雰囲気はなくて、全員でチームをどうにかしたい……プレータイムの少ない選手もそういったことを意識できているんじゃないかなと思います」
選手一人ひとりが誰かに頼るのではなく、自分こそがチームを担う一人だと強く認識する。そんな“オーナーシップ”がおのずと“リーダーシップ”の発揮にもつながり、チームとしてのまとまりを生んでいる。
ベンドラメは言う。
「僕自身、キャプテンという意識はあまりしてないんですね。そういうことをチームにも伝えているので、一人ひとりがリーダーとしてチームを引っ張っていってほしいし、キャプテンが言わないと動けない選手がいるチームは上に行けないと思っているので、そういったところが各々のリーダーシップに生きてきているのかなと思います」
前記のとおり、昨シーズンまでチームの大黒柱として活躍したサクレが突然、現役を引退した。それはプレー以上にチームの精神的支柱を失うことを意味したが、一方で選手一人ひとりがリーダーシップを発揮するきっかけにもなった。
ケリーもそんな選手のひとりだ。
「サクレはもちろんボーカル(vocal:遠慮なく意見を述べる)というか、誰かが発言しなければいけないときに率先して発言をするなど、チームを率いるうえですごく重要な存在でした。その彼が抜けたことによって、誰かがその穴を埋めなければいけなくなって、そこは自分がステップアップしなければいけないところなのかなと思って、行動をしています」
デューク大学時代にキャプテンを2度務めたことがあるというケリーだが、その経験が彼をそうした立場に押し上げたのではないと言う。
「キャプテンであろうがなかろうが、誰かがチームを引っ張っていく存在になっていくときがいつかは来るもので、僕にとって今はそういうときかなと考えています」
連勝は止まったが、だからこそ、今度は連敗の道に引きずり込まれないよう、今日の負けをしっかりと教訓にしたい。
次節は7勝1敗で中地区1位の川崎ブレイブサンダースと対戦する。
「まず徹底してやらなければいけないのは40分間ディフェンスのインテンシティ(強度)を高く持ってやること。今日はゲームの終盤になってディフェンスがアグレッシブになったけど、それを40分通して自分たちのスタンドダートにしていくことが、これからの一番のカギになると思います」
ケリーの言葉にチームメイトはどんな反応を示すのか。
地区をまたいだ1位同士の対戦は10月26日(土)、SR渋谷のホーム・青山学院記念館で17:05にティップオフされる。
文・写真 三上太