強くて愛されるチームを作り「5年後にB1で優勝」
8月9日、『89ERSの日』に登場していただくのは、仙台89ERSの渡辺太郎社長と志村雄彦GMだ。今シーズンより復帰した片岡大晴とともに、3人揃って仙台高校出身。八村塁(ワシントン・ウィザーズ)を育てた名将・佐藤久夫監督(現・明成高校)の申し子たちが、仙台バスケを熱くする。昨年から渡辺社長と志村GMが就任した新生89ERSは、「強くて愛されるチームを作る」ことをチームビジョンに掲げ、ファーストシーズンを駆け抜けた。
「強いチームを作って勝つだけであれば、タレントある選手を編成すれば達成できる可能性はあります。しかし我々は愛されることも掲げており、そのためにどういうバスケをすべきかを考慮しながらチームフィロソフィーやカルチャーを作っています。地元の選手を獲ることも愛されるためには大切な要素になってきますが、そのバランスは考えなければなりません」(渡辺社長)
片岡の獲得も、「仙台出身だから呼ばれたと言われたくないと彼自身が考えており、それは我々も同じです」と渡辺社長は続けた。地元選手というフィルターとともに、「人の心を動かすバスケットボール」スタイルに合致しなければならない。「愛されること」や「人の心を動かす」ことに関しては、160cmの小さな体で常にボールを追いかけていた現役時代の志村雄彦GMを思い出す。「だからこそ、今は選手に伝えやすいですし、僕が大切にしていた部分です」という志村GMもまた、チーム編成ではバランスを大事にしていた。
「若くてタレントある選手を集めても勝てないですし、経験のあるベテランだけでもうまくいきません。一人として同じスタイルの選手はいないので、そこをうまく配置するのがGMの役割だと思っています。また、ピタッとハマったとしてもそれが何年も続くわけではなく、生ものと一緒です。NBAを見ても最近はBack to Back(2連覇)までしかなく、THREEPEAT(3連覇)することが難しい時代になっています」(志村GM)
40分間の中で選手を起用するのがヘッドコーチならば、GMは1シーズンを通し、さらに先を見据えてチーム編成を考える立場と言える。心機一転した昨シーズンから、「5年後にB1でチャンピオンになる」ことを目標に掲げた。しかしその船出は順風満帆とは行かず、「正直なことを言えば、チャレンジはするけど結構厳しいなとは思っていました」という志村GMの言葉どおり、B1昇格は果たせなかった。桶谷大ヘッドコーチを迎え、選手を入れ替え、さらにチームカルチャーを構築しはじめたばかりであり、時間がかかるのも致し方ない。