前半戦こそ15勝5敗と幸先良いスタートを切ることはできた。しかし、強豪ひしめく西地区との対戦や同地区対決2巡目を迎えた中盤戦は黒星が先行する。紆余曲折がありながらも、3月9日以降は14勝1敗でラストスパートをかけた。4月13日の群馬クレインサンダーズ戦を落とし、B2プレーオフには届かなかったが、「ポジティブなメッセージを残して終われたことは、僕らにとってはかなり評価できる点です。お客さんやチーム内外の人に対してワクワクさせることができ、来年こそはという希望を持たせることはできたと思っています」と志村GMも手応えを感じている。
「だからこそ、今シーズンは必然的にハードルが高くなっています。その分やり甲斐はあるし、チーム編成もやりやすかったです。自分たちが目指す89ERSを昨シーズンに見せることができ、今シーズンは結果を出すためのチーム作りができました」(志村GM)
1億円プレーヤーが誕生し、景気が良いB1とは違い、B2は厳しい運営状況を強いられている。渡辺社長体制になった昨シーズンの決算はまだ公表されていないが、B1だった1年目とB2に降格した2年目の人件費は約1.2億円と据え置きのままのチャレンジだった。しかし結果は東地区4位、B2全体で11位と低迷する。人件費が結果に直結しやすいことは決算からも見て取れる。渡辺社長もチーム人件費をさらに上げて臨んだが、昨シーズンの結果は3ゲーム差で首位に届かず東地区2位だった。「大きなお金はかけられませんでしたが、個人の能力に依存することなくチームで戦うことはできていました」と渡辺社長もビジネス面での手応えを感じている。
「昨シーズンの決算は終わっており、黒字転換はできませんでした。ただし、売上は大幅に上がっていますし、それ以上にファンが増えており、今シーズンは黒字にする自信があります。チームも同じであり、昨シーズンにB1へ上がってしまっていたら、チーム人件費を一気に上げなければならず、今の経営体力では一年で降格して、お客様をがっかりさせてしまったかもしれません。かなり格好悪い言い訳になりますが、もう1年、B2でしっかり経営体力をつけてB1に上がるためにも、今シーズンはすごく重要になってきます」(渡辺社長)
プロスポーツチームは事業サイドの『ビジネスオペレーション』と、現場サイドの『バスケットボールオペレーション』の両輪で前に進まねばならない。どちらかが先走っても傾いてしまう。「選手だからとか、事業サイドだからとかは関係なく、選手が誇りを持ってプレーするのと同じように、89ERSに携わる全ての人たちがバスケットボールの発展を願い、それを信じて一緒に汗をかいています」と渡辺社長は話しており、チーム一丸となってB1復帰を目指す。
part2へ続く「『がんばり』を数値化する『GRiND』が選手に対する評価基準」
文 泉誠一
写真 安井麻実