※本記事はバスケットボールスピリッツのWEB化に伴う、2017年3月末発行vol.7からの転載
色紙に書いた座右の銘は……「無責任」。幼い頃、父親が聴いていたクレージーキャッツの影響もあり、理想像は植木等。映画・無責任シリーズでは、いい加減なサラリーマンが様々な問題に対してテキトーに首を突っ込みながらいつの間にか成果を挙げ、自らもトップに登り詰めていく喜劇。テキトーやいい加減をポジティブに捉えれば、いずれも『程よい』という意味になる。キャプテンとして程よい距離を保ちながら、ホンダラ・スーダラと我が道を行く一方、肝心要の時は「黙って俺について来い」という親分肌がある小野龍猛のキャプテンシーに迫る。
── キャプテンとなった昨シーズンは苦しみながらもプレーオフへ、今シーズンはオールジャパンを制し“龍猛効果”が出ているわけだが、キャプテンとして心がけていることは?
特に多くは語らないようにしています。悪い流れや良くない時にハドルを組んで率先して声をかけるようにしている程度。普段はクセのある連中ばかりなので、俺がどうこう言うわけでは無く、コーチの指示に従っているだけです。特にそんな自分自身で決めていることはないです。
── 初優勝を遂げたオールジャパンは短期決戦のトーナメントであり、少なからずキャプテンシーも必要だったのでは?
確かに負ければ終わってしまうので、毎回試合に入るときの気持ちの部分には問いかけていました。勝ちたい気持ちが強いチームが勝つと思っているので、少しでも気持ちが緩んだときには「勝つ気持ちがあるのか」とベンチで声を荒げたりする場面もありました。それに関しては、今でもベンチやハーフタイム中には声をかけるようにしています。
── 様々な年代の個性豊かな面々をまとめなければいけない日本代表キャプテンのときはどんなことを考えていたか?
な〜んにも考えてなかったです。各々がすでにリーダーシップがある選手ばかりなので、そこに対して俺がどうこう言うことでもなかったです。もちろん言うべきことは言いますが、それ以上にみんなが言うので、特に俺は何もしなくて良かったです。
── 2年目から田臥勇太選手が選出されたが、長谷川健志さんが率いた1年目はまだまだリーダーシップが浸透していない部分もあったのでは?
でも、(橋本)竜馬も言いますし、もちろん田臥さんが来たときは率先して言います。逆にあとの選手たちは言わないので(笑)、その3人とあとは広瀬(健太)さんが何かあれば言っていた印象があります。人それぞれいろんなタイプがいるので、それはそれで俺は良いと思います。いろんな選手が集まってそれぞれの役割に徹していたからこそ、あのチームがまとまったのではないかと思います。
── 長谷川さんが説いてきたリーダーシップで得たものはあったか?
長谷川さんは人格者であり、哲学のようなものが好きな方ですが、俺は正直そこまで好きではない。でも、長谷川さんの芯にあるものは素晴らしいです。3年間一緒にやってきて学べた部分は、すごく大きなものでした。自分のリーダーシップは無責任なところもあるんで…。なんか、相手やチームメイトでも一旦俯瞰して見るタイプなんです。そうやって見て、足りないところを言ったり、補うのが俺の仕事。たぶん、社長など上に立つ人は皆そうなんじゃないかな。一旦俯瞰して見られる人が素晴らしいというか、変わり者の方が多いのかな(笑)。キャプテンが変わり者ばかりというわけではないですが、そうやって引いて見ることも大事なんじゃないかなと俺は思いますけどね。