取材当日の練習後に興味深いシーンがあった。試合を見る限り、寡黙な印象だった岡田が松井啓十郎ら先輩たちとの談笑の輪に入り、しかも率先して何かをしゃべっている。むろん入団して4カ月が経とうとしているのだから、そうしたコミュニケーションがあってもおかしくない。しかし20歳のルーキーである。聞き役が中心かと思っていたが、話し手になる割合のほうが多いことに少し驚いた。
その輪が解けると、今度は森川正明とシューティングを始めたのだが、ここでも7つも年上の森川と年の差を感じさせない、軽妙なノリで話しながらシュートを打ち、リバウンドを拾っていた。
「その距離感を許してくれる先輩と、そうでない先輩がいると思うんですけど、三河には比較的その距離感で話してくれる先輩が多いので、自分自身もあまり気を遣うことなく接してもらえています。みんな、やさしいんで」
そこには彼のなかに内在するある種の幼さというか、どこかでまだ学生の身軽さが残されているようにも感じられた。これが20歳の岡田侑大なのか。
「いや、どうなんですかね。バスケットをしているときはあまりしゃべらない選手なので……もちろんしゃべれたほうがいいんですけど、ああいう軽い雰囲気のときはいつもああいう軽い感じですかね」
軽妙な一面を持ちつつ、バスケットになるとどっしりと構える。そのギャップが彼をスターにのし上げていくのかもしれない。たとえば同じ関西出身の辻直人や、篠山竜青(ともに川崎ブレイブサンダース)のように。
しかし本人は「全然、僕はあそこまでおもしろくないです」と否定する。そしてこう続けるのだ。
「そういうの(軽妙なファンサービス)も大事だと思うんですけど、僕はそっち系ではないですね。どちらかといえばファンの方々が自分のプレーを見てワクワクしてくれたり、楽しんでくれたらいいなと」
岡田自身、いくつかあるNBAのゲームを見ようとするときの選択基準は「ワクワク」にあるという。NBAだけじゃなく、学生時代に好んで見ていたのも比江島慎(栃木ブレックス)のようなワクワクさせてくれるプレーだった。だからこそ、その比江島と同じコートに立ち、NBAと同じ“プロ”となったからにはファンをワクワクさせるプレーをしなければならない。
岡田のプレーをまた見たい――そう思わせることがプロとしての役割だと、岡田は考えている。
part3に続く
【日本一のエースになるために】
文 三上太
写真 安井麻実