※本記事はバスケットボールスピリッツのWEB化に伴う、2018年10月発行vol.26からの転載
ボクシングバンタム級王者の井上尚弥の身長は165cmだが、世界最強の呼び声は高い。身長なんか関係ないと言いたいが、ボクシングは体重による階級分けがある。しかしバスケは無差別級なのだ。169cmの鈴木達也と206cmの太田敦也の身長差は37cmだが、重心を低くして戦うコート上では半分のサイズしかないようにさえ見える。凸凹な個性をピタリと合わせて、チームを勝利に導いていくのがバスケの醍醐味だ。「ムチャクチャなパスは絶対に出さない。それがポイントガードとしてのやさしさ」という鈴木は周りを気遣いながらパスを供給し、ゴールへと導くコンダクター。bjリーグ時代は2年連続アシスト王となり、自らも得意なプレーという『パス』の秘訣に迫る。
── 得意なプレースタイルは?
やっぱりアシストです。アシストでチームに貢献したいですし、無理矢理得点を獲るようなタイプではないことは自分でも分かっています。バランス良いプレーを毎シーズン心がけています。
── アシストを成功させるための秘訣は?
ギャンブル的なパスはしないように気をつけています。ターンオーバーにつながり兼ねないですし、そうなったら相手に勢いを与えてしまうから、第一に正確性を求めています。特にBリーグになってからはバスケットの質やレベルはbjリーグの頃よりも上がっていますので、そこは意識しています。
── bjリーグ(バンビシャス奈良)で2年連続(14-15・15-16)アシスト王になった要因は?
あのときは良い意味でも、悪い意味でも思いっきりよくプレーしていました。チームとしてあまり攻め手がなく、自分が起点になることが多かったので、ガムシャラにやっていたからアシストが増えたんだと思います。でも、その分ターンオーバーも多かったです。今はそれよりもミスを少なく、どれだけ正確にパスを供給できるかが求められており、プレースタイルも変わりました。
── Bリーグ誕生とともに三遠へ移籍し、B1で戦ってきたことで成長できた点は?
三遠ではリーダーシップを発揮しながらチームをまとめて、より良いパスをスコアラーたちに供給し、ディフェンスが空けば自らシュートを打つバランスの良さを積み重ねてきました。それが今のチームに求められていることでもあります。無理矢理パスを通そうと思わなくなり、できる限り確率の高いパスを選ぶようになりました。より正確な判断ができるようになったのが成長したところです。
── 逆にその正確性がなければB1では通用しない?
そうですね。ガムシャラにやればある程度の個人スタッツは取れるかもしれませんが、それよりもチームとして機能させることを優先してプレーすることが大事になります。それこそがプロの世界で僕が生き残るための術であり、そこで長けていないと生き残れないという危機感もあり、一番気をつけている部分です。