選手層厚い川崎ブレイブサンダースでの永吉佑也選手は平均15分程度の出場時間だったが、京都ハンナリーズに移籍したことで約30分に倍増。その結果、得点は4.5点→9.5点、リバウンドも2.1本→5本と軒並みスタッツを伸ばしている。チームも3勝1敗とスタートダッシュに成功し、第2節を終えた時点で西地区の首位に立った。
率先してリーダーシップを発揮するチームワーク
永吉選手の移籍に対する心境については、現在配布中の弊誌フリーペーパーでご紹介したとおり。その取材を行ったとき、「今年は若返ったから無理をさせられる」と浜口炎ヘッドコーチは話していたように、走り込みを課していた。永吉選手も「この夏は結構走ってますよ〜」と、その弾む声から充実したオフシーズンを過ごしていることが分かる。ここ数年は日本代表の活動が多かったが、6月の東アジア選手権以降は残念ながら招集されず。その分、集中して自らの課題を補う時間に費やし、「レベルアップできたなぁ」と実感していた。
「もちろん日本代表に選ばれて、試合をすれば経験値は上がります。でも今年は夏にトレーニングした分、個人的にレベルアップできたし、新しいことにもいろいろ取り組んでいます。体重をキープしながら身体が軽くなっていますし、身体の使い方に関しても北川(雄一)トレーナーにいろいろと指導してもらって良くなっています。毎日自炊しながら食事の管理ができているのも、川崎時代にお世話になった管理栄養士さんと寮の調理師さんのおかげであり、すごく感謝しています」
その成果は早くも見られており、チームトップとなる6本の3Pシュートを成功させている。まだ4試合しか終わっていないが、早くも昨シーズンの総数に並び、3Pシュート王・金丸晃輔選手(シーホース三河)に匹敵する成功数だ。また、11月24日(金)より始まるFIBAバスケットボールワールドカップ2019 アジア地区 1次予選へ向けた日本代表候補選手に選出され、ますますの活躍が期待される。
永吉選手を中心に年代が分かれている今シーズンの京都の選手たち。
「先輩たちはすごく優しくて、僕は言いませんが後輩たちはニックネームで呼んだりするほどフランクであり、仲が良いです。先輩たちも僕たちに遠慮させることなく、力を引き出そうとしてくれています。みんながリーダーシップを発揮することがこのチームの一番良いところです」
練習後の選手たちの振る舞いを見れば、先輩、後輩、日本人、外国籍選手、選手、スタッフ問わず、誰に言われることなく荷物を運んだり、後片付けをテキパキと行っていた。それぞれがリーダーシップを持ち、人のために働いている姿を見れば、チームワークの良さがうかがい知れる。その感じたままを永吉選手に伝えた。
「言われてみればそうですね。そうやって考えたことはなかったですが、みんなができる仕事をみんなでやろうというチームではあります。シューティングしている人がいれば片付ける人もおり、そこはみんなで助け合っているし、その雰囲気はすごく良いですね」
標高233mの稲荷山を前に──
本誌でも紹介したとおり、永吉選手にとって京都はほぼ無縁の地。鹿児島県出身であり、修学旅行は「中学の時は長崎と福岡、高校はブリティッシュ・ヒルズ(福島県)で英語だけしか話しちゃいけない研修施設に行きました。すごい苦労しましたが、メッチャいいところでした」と振り返る。強豪・延岡学園高校だけに、遠征や大会等で訪れる機会がありそうだが「全くないです。昨シーズン、滋賀(レイクスターズ)と対戦したときに京都駅に降りた程度」であり、京都戦も川崎のホームゲームだった。
新たな拠点となる京都のイメージは、「街並の至るところで古都を感じられるんだろうなぁとか、寺や神社が街の至るところにあるイメージ。街中でも舞妓さんに会えたり、あとは外国人観光客が多いという印象でした」。しかし、実際に住んでみると「外国人観光客はすごく多いですが、舞妓さんにはまだ一回も会ったことはないです」というギャップを感じている。
オススメスポットとして『伏見稲荷大社』を挙げてくれた。たまたま取材日は、朝早く京都入りしたことで、取材前に足を伸ばしたのがそこだった。朱い鳥居のトンネルにテンションを上げながら先を進むと、稲荷山の存在を知る。天候も良く登りたかったのだが、どれほど時間がかかるか分からずその日は断念。オススメしてくれた永吉選手は、きっと山頂を制覇したはずだ。
「僕も登ってないです…。1時間くらいかかるらしいです。でも、頂上は見晴らしも良く楽しいという話も聞きました。(内海)慎吾さんは行ったらしいです。僕が行った時はものすごく暑かったので断念しました。そう、京都は暑いんですよ。メッチャ暑い!ビックリした!!汗」
再び京都に行った際は、稲荷山を制する目標ができた。永吉選手よりも先に──
燃える男がガッツリタッグを組んで京都を熱くさせる
昨シーズン、川崎と京都の対戦は2度あり、いずれも川崎が勝利を挙げた。当時、対戦相手だった京都に対し、永吉選手は以下のような印象を持っている。
「あの時はちょうど外国籍選手が変わったばかりで、しかもケガ人がいるような状況だったと思います。ベンチが薄い状況であり、チームとしては苦しいはずなのに、それでも一生懸命戦い、川崎とも競った試合をしていました(1戦目:川崎83-80京都、2戦目:川崎101-90京都)。激しさを持ったチームですし、選手たちもマジメに取り組んでいた印象がありました」
今シーズン、京都vs川崎の対戦は来春のゴールデンウィークに突入する4月27日、28日だが、再びとどろきアリーナである。
浜口ヘッドコーチについては、「bjリーグ時代から誰よりもがんばってきたと自負していると言ってました。昔のことは何も分かりませんが、でも炎さんの話を聞くと、積み重ねてきたものを感じます。炎さんの下でがんばることで、人として成長させてくれるとも感じています。誰よりも早く体育館に来て、しっかりと準備して僕たちを迎えてくれていますし、よく話を聞いてくれます。炎さんは、まだコーチ経験が足りない分、他のどのコーチよりも選手の話を聞くようにしていると言ってくれました。だから、これだけ意見を聞いてくれるコーチはいないですし、炎さんには全部包み隠さず話せています。芯のあるヘッドコーチです」。燃える男同士がガッツリとタッグを組み、さらに京都を熱くさせていく。
文・写真 泉誠一