B3リーグの10シーズンの歴史の中で、プレーオフ制度は最後の4シーズンだけ導入されたが、レギュラーシーズン1位のクラブが優勝を逃したのは今シーズンが最初で最後だった。では、それまでの3度のプレーオフが番狂わせのない順当な結果だったかといえば、そうではない。実は、レギュラーシーズン2位のクラブがファイナルに進出したことは一度もなく、昨シーズンと今シーズンに至っては、2位のクラブはセミファイナルに進むことすらできなかったのである。
昨シーズン、2位で一躍B2昇格の有力候補に浮上した東京ユナイテッドバスケットボールクラブをクォーターファイナルで撃破したのがアースフレンズ東京Z。レギュラーシーズンは27勝25敗とかろうじて勝率5割を超える成績に終わっていたが、プレーオフではアンソニー・ケントヘッドコーチの戦術と巧みな選手起用が光り、アップセットを実現してみせた。勢いづいた東京Zはセミファイナルも新潟アルビレックスBBを下し、B2ライセンスを持たないにもかかわらずファイナル進出を果たしてみせた。

そんな東京Zの躍進において、中心的役割を果たした1人が井手拓実だ。B1に2シーズン在籍したポテンシャルの持ち主とあって、一昨シーズンに東京Zの一員となるとエースガードの地位を確保。昨シーズンは出場51試合全てスターター出場で、1試合平均9.7得点4.7アシストという数字を残している。その実績を買われて今シーズンはライジングゼファー福岡に移籍したが、シーズン途中に期限付移籍という形で東京Zに戻ってきていた。
そして、シーズン終了後に開催されたB3オールスターに、東京Zから唯一選出。東京Zではちょうど半分の26試合しか出場していないが、それでも選ばれたのは東京Zを代表する、オールスターに相応しい選手であるということだろう。
「オールスターに出ることが僕自身初めてですし、独特な雰囲気だったんですけど、楽しんでプレーすることができました。オフシーズンに入って少し休んで、今日のためにというわけじゃないんですけど来シーズンに向けて動き始めていたので、コンディションはそこまで悪くなかったかなという感じです。オールスターに出る選手は皆さんとても上手で、パスしたらシュートを決めてくれるので、気持ち良くプレーできました」
終始拮抗した展開の中、前半にはムトンボ ジャンピエール(新潟)のアリウープダンクをアシストしたほか、第4クォーターのオフィシャルタイムアウト直前にはディープスリーを炸裂させ、東京Zファンに向けて “Zポーズ” を披露。得点はこの3点だけだったものの、5リバウンド5アシストと要所で見せ場を作り、EASTの勝利に貢献している。上記の2つのプレーについては井手自身も「お客さんも結構盛り上がったのかなと思います」と、インパクトを残せたという手応えがあったようだ。

井手は福岡に移籍して間もない頃に悪性腫瘍の診断を受け、療養していた時期があった。奇跡的にシーズン開幕に間に合ったものの、出場機会は限られ、東京Zに舞い戻る格好になった。当然ながら病は辛いことだが、どんな現実からも決して目を背けず、自身の糧にしていこうという前向きなマインドが井手にはある。その過程はどうあれ、東京Zに戻ってきたからこそ、B3の最後を飾るオールスターに出場することができたのだ。











