この記事が出た日は、ちょうどFIBA3x3ワールドカップが開催されている最中。このところ3×3日本代表は3×3を主戦場としている選手が代表合宿に多く招集されており、今大会も男子は本登録の4枠全てが3×3専門の選手から選ばれ、女子ではFLOWLISH GUNMAから髙橋芙由子が名を連ねた。そしてもう1人、2024-25シーズンに32歳にしてWリーガーとなり、先頃トヨタ自動車からトヨタ紡織への移籍が発表された桂葵も3×3育ちの選手だ。
桂は今も、3×3には変わらず力を注ぎ続けている。プレーするだけにとどまらず、桂が2022年に設立したZOOS合同会社はこのほどFIBAからワールドツアー予選会の権利を買い、QUEEN OF QUEENS 3×3(以下、Q.O.Q)を開催。優勝チームには賞金100万円と、7月末にアゼルバイジャンで行われるWomen’s Seriesへの出場権が与えられるというビッグトーナメントだ。
先立って5月24日に予選ラウンドを実施し、そこで勝ち残ったMAURICE LACROIXとTOKYO VERDY.EXE、UENOHARA SUNRISEの3チームに3×3日本選手権昨年度優勝のBOLDIIIESと3XS昨年度優勝のFLOWLISH GUNMA、ホストチームのZOOSを加えた計6チームが6月8日の本大会で覇権を争った。賞金100万円とアゼルバイジャン行きのチケットは、ファイナルでMAURICE LACROIXとの熱戦を制したFLOWLISH GUNMAの手に渡った。ジョーダンブランドやヤマザキビスケットなどが協賛したこの大会は、ゲストに宮崎早織(ENEOS)を迎えるなど、イベントとしても運営サイドの本気度が窺えるものだった。
今回の開催に関しては、FIBAと毎年ミーティングを重ねている中で、Women’s Series Qualifierを日本で開催したいというFIBAの意向を受けて手を挙げたもの。「メンバーが何をしたいかが最優先」で3年間活動してきたZOOSも、前田有香が3×3女子日本代表のヘッドコーチに就任するなど、オリジナルメンバーがそれぞれにキャリアの節目を迎えたことで「自分たちがチームを作って世界に出るフェーズは一区切り」と判断し、次の一歩を踏み出すこととなった。
「無茶でもなんでも1回作ってみないと、次に何ができるか誰も見えない。これをやって、女子の3×3すごいじゃん、日本盛り上がってるじゃんってなれば、FIBAの主要マーケットになるかもしれないんだから、誰もやらないんだったら『私たちがここにいるよ』 って言っていかきゃいけないと思って」
桂は「日本の3×3の熱量は普通じゃないし、こんなにチームがたくさんある国はない。『遅れてる』って言われるけど、むしろ先進国。その誇りをみんなにも持ってほしい」と考え、「富樫勇樹や河村勇輝、町田瑠唯みたいなスターがいるわけじゃない。だから、自分たちで価値を上げていく」ことに使命感を抱いている。これまでZOOSで取り組んできたことも、3×3のシーンに少なからず良い影響を与えるものだった。
しかし、それは周囲の評価に過ぎず、桂にとってZOOSは自身が世界に出ていくためのツールであることが第一義だった。Q.O.Q開催も、主体的にシーンを動かしたいというよりは、自身の周辺とハッピーを共有し、その先によりハッピーな何かが生まれればという意識が強いようだ。オープニングでの挨拶を終え、列に戻る際に他チームの選手からも称賛の意味でポンポンと肩を叩かれたことを思い返した桂は、“仲間” の存在に涙した。