レギュラーシーズン60試合、CS(チャンピオンシップ)9試合、そしてEASLでも6試合。琉球ゴールデンキングスは昨季のBリーグで最も多くの試合を戦ったチームだ。
滑り落ちた西地区王座から再びギアを入れ替えて臨んだCS。クォーターファイナル、セミファイナルともに第3戦までもつれ込む激闘を制し、2年連続で上がったファイナルの舞台は1勝2敗で涙を飲んだ。全75試合にスタメン出場し、最後までチームを牽引し続けた岸本隆一はそのとき何を感じていたのか。自分の言葉で昨シーズンを振り返ってもらった。
怒涛のシーズンを乗り越えて前を向く
── まずは2023-24シーズンを振り返っての感想を聞かせてください。
ひと言で言えば大変なシーズンだったなというのが率直な感想です。シーズン中に選手も入れ替わりましたし、このままトントン拍子で優勝まで突っ走れるのでは?という時期も経験したし、今ひとつ波に乗れなくて苦しんだ時期も経験したし。最後は準優勝に終わって、何とも言えない喪失感も味わいました。なかなか気持ちが追いついていかないような、そんなシーズンだったと思います。
── ディフェンディングチャンピオンとしては当然2連覇を視野に入れて臨んだシーズンだったと思いますが、終盤に喫した4連敗が響き西地区王者は僅差(同率、当該クラブ間での対戦成績)で名古屋ダイヤモンドドルフィンズに譲ることになりました。アウェーでスタートしたアルバルク東京とのクォーターファイナルは1戦目からダブルオーバータイムの死闘でしたね。
ありがたいことに今までのCSはホームで迎えることが多かったんですけど、それが今回はアウェーになって、相手はアルバルクさんですし、タフなゲームになることは覚悟していました。チャレンジする気持ちを強く持って臨まないとゲームにならないじゃないかという危機感もありました。だけど、なぜだか僕はいつもよりわくわくしたんですよね。
── 第1戦を勝ち切り、第2戦を落とし、後がない第3戦はA東京の追撃を振り切って1点差の勝利。あんなにも熾烈な、あんなにもヒリヒリする試合を戦いながらわくわくしていたんですか?あのコートの上で?
はい、僕はずっと楽しかったです。こういう言い方をすると誤解されるかもしれませんが、西地区の優勝を逃したとき、もちろん悔しかったですが、一方で身が軽くなった気がしたんです。3月の天皇杯決勝では千葉ジェッツさんに完敗して、地区優勝も逃した自分たちにはこれ以上失うものはないんじゃないかと思って、いい意味での開き直りというか、当たって砕けろみたいな気持ちになったら楽しくなってきました(笑)
── 『レギュラーシーズンとCSは全く別の舞台』というのはよく耳にする言葉ですが、岸本さんの言葉でその違いを表すとしたら?
そうですね。極端なことを言えばレギュラーシーズンのデータなんて全然あてにならないのがCSだと僕は思っています。レギュラーシーズンを戦いながら、たとえばあの選手はこの場所が得意だとか不得意だとか、そういうデータを得ることはできます。けど、CSはそのデータを大きく超えた戦いになるんですね。CSを戦った選手ならみんなそう感じるんじゃないでしょうか。あの短期決戦を戦い抜くためには集中力を切らすことなく、一戦、一戦、目の前の敵に挑んでいく、それが全てだと思っています。