その日のあとに
「『なんでコーヒーなん?』ていうのをやっぱ世間の人は知りたがってると思う。」
話が一旦落ち着いた頃合いを見計らって、僕にそう告げた譲次の顔つきはすでにライター然としていた。
50分にも及ぶ取材のうち、実に半分近くがコーヒーの話。
取材する側とされる側の逆転現象は度々発生し、新米ライターを困惑させた。
この短時間でインタビューの腕を上げすぎている。
なんだよ「世間の人は知りたがってる」って。
どんだけ誠実な民意の代弁者なんだよ。
立候補したら絶対投票するからな。
まんまと凄腕の覆面記者に踊らされてしまったが、このままおめおめと引き下がるわけにはいかない。
つい最近になって新しい日々を歩み始めた身としては、「バスケットボール選手って引退したらなにしてんだろう」の疑問に頭を悩ます毎日で、夜も朝までしか眠れないのだが、ちょうど目の前にうってつけの人材がいたので聞いてみることにした。
石崎 でも譲次的には選手終わったらまたバスケットの世界でって感じなの?
竹内 僕はザキさんと違ってもうそんな多彩じゃないんで。需要があればやけどもちろん。じゃあ自分がもしそっちの方向に行けたとして、どのカテゴリーでどういうことをやりたいか、選べるかはもちろんわからへんのやけど、もし選べるなら自分としてはこういう場所でこういうふうにやれればいいなあ、ぐらいなのは漠然と考えたりは一応するけど。
石崎 それは…コーチとか?
竹内 一つのチームっていうよりかは、一つのチームで限られた選手を見るっていうよりかはもっと広く見たいなっていうのはある。今のところは。例えば若い世代の身長大きい子たちをU15かU12かわからんけど、そういう世代の子たちを見させてもらえればいいなあ、くらいの感じ。漠然とほんとに。
石崎 それは言葉の印象から受けるに、どっかのチームについてU15のチームで教えるんじゃなくて他のところでも、みたいな感じなの?
竹内 そうやね。ずっと帯同っていうかはU12だったりU15だったり、もしかしてU18、わからんけど。逆にどういうスポットがあるのかもわからへんし。でもその今多分、コロナ始まってからはわからんけどその前までは「エンデバー」みたいなさ、中学生くらいの大きい子だけを毎回NTC(味の素ナショナルトレーニングセンター)とかに呼んで合宿とかしてたりしたやん、しょっちゅう。え、してへんかったっけ。
石崎 してた…気がする。
竹内 あなた体育館住んでたやん。そういうときとかに、そういうのがどれくらいの頻度であるかも全然わからへんけど、そういうときとかに指導できたりとかしたらいいなあって。
石崎 でもそういう方がいいっていうか、俺は一つのところにずっといるってけっこうリスクだと思う。入ってくる情報が限られちゃう。で、そこの常識みたいなものにも縛られがちになっちゃうから、多角的な目線で見れないっていうのは教えられる側にとってもあんまりいいことじゃない。
竹内 ましてや若い世代って余計にいろんな選択肢だったり、アプローチの仕方をしなきゃいけない。どういうあれにいくかわからへんわけやし。
石崎 今そういうスポットがないにしても、なんかしらでそういう人が必要だとは思うんですよね。
竹内 全然コーチ経験があるわけじゃないから、わからん、わからんていうか…自分がどういうことできるかって正直…だからほんとにぼんやりやで。