「冬に咲くひまわり」をググってみたのは、赤穂ひまわりを取り上げようと思ったからだ。
女子OQTの第2戦、日本はベルギーに84-92で敗れた。この試合のハイライトを挙げようと思えば、真っ先に林咲希の3ポイントシュートが浮かぶ。最大18点差をつけられた第4クォーター、林は6本の3ポイントシュートを沈めて、1点差に詰め寄る立役者になった。そんな常道からやや逸れて、長岡萌映子が序盤に見せた積極性、復帰した大﨑佑圭の3ポイントシュート、本川紗奈生が示した存在感を挙げてもいい。にも拘らず赤穂に目を向けたのは、ボクが天邪鬼であることもそうなのだが、このOQTが彼女にとってA代表の主要メンバーとして臨む最初の世界戦だったからだ。
一昨日おこなわれたスウェーデン戦では、ポジション争いの際に鳩尾に裏拳を入れられるなど“世界の洗礼”を浴びていたが、それに怯むことなく2つのブロックショットを決めている。そうした姿に「逞しくなっているなぁ」と感じたものだ。
そしてベルギー戦。結果は8得点・4リバウンドとさしたる数字ではないし、本人も「自分、全然ダメだったんで……チームが流れに乗っているときにミスをしちゃったので、反省点が多いなと思います」と言っているのだが、それでも世界ランクで格上の相手と対戦して何かしら気づくことはあるんじゃないか。そう思ったわけである。
すると高校時代は試合後にコメントを求めても、うんとか、すんとかしか言えなかった赤穂がしっかりと問いに対する答えを返してくる。
「世界レベルだとアジャストしても相手がそれをまたアジャストしてくるので、こちらが後手後手に回っている気がして、そういうところはうまいなと思いました」
気づきだけではない。彼女なりの考えも示すようになった。
「今は自分のプレーが出せていないので、自分がというより、チームとして『こうやって守ろう』と決めたことに対してアジャストされているので、もっと臨機応変に、コミュニケーションを取って守っていかなければいけないなって」
こうなるとツッコミたくなる。なぜ、今、自分のプレーが出せていないの?
「自分のなかではディフェンスからオフェンスにつなげるという気持ちでやっているんですけど、今はディフェンスがうまく行っていないので、そこでリズムに乗れていないところはあります」
個人とチームがリンクする瞬間である。世界レベルでの戦いでは、もはや個人の力だけではどうにもならないこともある。そこをチームとして埋めていくのだが、ベルギー戦は日本のアジャストに対して、さらにベルギーがアジャストをしてきて、その先が出し切れなかった。
今さらだが、アジャストとは「対応」のことである。
むろんトム・ホーバスヘッドコーチもさらなるアジャストを指示したのだが、「アジャストのアジャストのアジャスト」は精度を欠いた。そこにアジアとの差を見つけることができる。赤穂は今、その壁に全力でぶつかっている最中なのだ。
「自分は今大会、本当にダメなプレーばかりしているのに、それでも結構なプレータイムをもらっています。だからそれをしっかりと経験に変えて、どんどんレベルアップしていかなければいけないなって思っています」
グーグルによると、どうやら日本国内に「冬に咲くひまわり」はあるらしい。ただ日本代表の“ひまわり”はまだ咲きそうにない。でも、それでいい。ひまわりは夏に咲いてこそである。
バスケ徒然草「ベルギー・オステンドOQT編」
第6段「三本の矢」
第7段「見頃、咲き頃」
第8段「King & Prince」
第9段「曇天の荒波」
文・写真 三上太