想定外の3部スタート「ヤバいところに来ちゃったな」
「高3のとき、幸嶋(謙二)さんに『2部でプレーできるから』と誘われました。でも、入学したときは3部に降格した年で、そのときは『ヤバいところに来ちゃったな』と少し思いました(笑)」
尾形界龍(横浜清風高校)が入学したときの神奈川大学は、関東大学3部リーグからのスタートだった。1年時の尾形はBチームにおり、「これから試合に出る機会はあるのかな」という不安とともに、幸嶋ヘッドコーチと約束していた2部でプレーできるかさえ分からなかった。「基礎的なことをしっかり教えてくれるチームであり、横浜清風高校も同じく基礎を重視していたので神大を選びました」と、成長することを一番に考えて日々努力していく。
1年目はAチームの活躍で2部リーグに返り咲き、2年目はリーグ再編もあり、入替戦なく神奈川大学として初の1部昇格を決めた。その年、12年ぶりに出場したインカレでは“ミラクル神大”と呼ばれる快進撃が続く。当時関西1位の京都産業大学を破って初戦突破。続く関東1部リーグの日本大学にも66-60で接戦を制し、ベスト8進出。準々決勝で拓殖大学に敗れたが、その後の青山学院大学戦も1部リーグの強豪を相手にいずれも一桁点差で苦しめる。尾形はベンチ入りしていたがが、インカレでの出場機会はなかった。
その年、ルーキーとしてやって来た小酒部泰暉(山北高校)がにわかに注目されはじめる。「そこからいろんな環境の変化があったことで、気持ちの緩みなどから本当に勝てる試合を落としたり、逆になんでこの試合に勝てたんだろう、というときもありました」という尾形が3年になり、初の関東1部リーグでの戦いがはじまった。
昨シーズンは8勝14敗、今シーズンも5勝17敗と負け越し、入替戦にまわったがなんとか勝利し、1部リーグに踏み止まっている。勝っても負けても接戦なのが、神奈川大学の魅力でもある。今シーズンの関東1部リーグでの22試合中12試合が、一桁点差の接戦だった。
最後のインカレは1回戦からもつれる展開の中、名古屋学院大学を68-63で下し、辛くも初戦を突破する。続く2回戦は、関東大学リーグ戦でも勝利していた白鷗大学と対戦。しかし、接戦となった初戦との連戦がボディブローのように効きはじめ、「身体的にもきつかったです。それが最終的に出てしまって足が動かなくなってしまいました」と悔しい思いで、学生バスケを引退することになった。
「この4年間は最初から最後までいろんなことがあり過ぎました」と尾形は大学生活を振り返る。ラストシーズンは「浮き沈みが激しいチームだったので、上がりきれなかったことでこれが最後の試合になってしまい、悔しい思いでいっぱいです」。しかし、ミラクルを起こしてきた魅力ある神奈川大学のスタイルをしっかりと継承している。
「オレともう一人の緒方(堅也/北陸高校)は上手さではなく、泥臭さとかハードにプレーし、それが神大らしさであり、二人の持ち味でした。そこは残る後輩たちに残すことはできたのかなと思います」