※本記事はバスケットボールスピリッツのWEB化に伴う、2017年7月末発行vol.11からの転載
3on3形式のストリートボールリーグ「SOMECITY(サムシティ)」。その「SOMECITY」以前に、同じくストリートボールのリーグがあった。「LEGEND(レジェンド)」である。そのLEGENDこそ、矢野良子の3人制バスケットの原点だと言う。
「知り合いがいて、よく見に行っていたんです。そのころからおもしろそうだなって思っていて、でも当時は五輪種目になるなんて思っていなかったから、5対5のバスケットを引退したら、楽しく3on3ができたらいいなぁくらいの感覚でした」
しかし世の中は急速に変化していく。一般に3on3と呼ばれていたストリート発祥のスポーツは2007年、FIBA(国際バスケットボール連盟)によって正式競技種目とされ、その後「3×3(スリー・バイ・スリー)」と名付けられた。
競技種目として確立されたことで、矢野の胸中にも少しずつ変化が見られるようになっていく。5対5を現役でやっている間に、そのまま3×3もできるようにならないか。その思いは3×3が東京オリンピックで正式種目に採用されたことで、より強固になっていった。
とはいえ、そのときの矢野はまだWリーグ・トヨタ自動車アンテロープスのメンバーである。5対5もやって、3×3もやるなんてことが許されるのか。会社側の反応は肯定的なものだった。
「2~3年くらい前に『3×3をやりたい』と話をしたら、会社としてもサポートしますという反応があったんですね。それで今年になって本格的にサポートしていただくことになったんです」
当初は今シーズンも5対5を続けて、並行して3×3を始めようと考えていた。しかし「二兎を追うものは一兎も得ず」という言葉もある。中途半端な姿勢で臨めば、どちらの競技にも迷惑がかかるのではないか。そう考え直した矢野は、5対5からの引退を決意、3×3一本に絞ることにした。
ワールドカップで感じた 3×3の難しさ
前後して「今年は3×3のワールドカップがあって、日本もそれに出られる」ことを耳にしていた。ならば国内ツアーで経験を積むよりも、ワールドカップに出たほうが今の世界のレベルがわかるのではないか。矢野はそう考えて3×3に正式登録し──3×3は個人で国内競技者登録、国際競技者登録をする必要がある──、日本代表の選考にも勝ち残った。3×3の未経験者ながら、6月にフランス・ナントで行われたワールドカップに参加したのである。
「(5対5とは)まったく違う!」
矢野が世界で最も強く感じた3×3の印象である。瞬間的につかまれても、ぶつかられてもファウルの笛は鳴らない。倒されても鳴らないことがある。ルールも異なり、10分間の1ピリオド制で、どちらかが先に21点を取れば「ノックアウト」として、残り時間の有無にかかわらず、ゲームは終わってしまう。