仲間の良さを引き出す役割分担と積極的なコミュニケーション
三菱電機コアラーズは今節の東京羽田ヴィッキーズ戦も2連勝を挙げ、現在10勝2敗でWリーグ2位をキープしている。先週の皇后杯2次ラウンドで山梨クィーンビーズに勝利した試合を含め、目下9連勝中だ。「役割分担をハッキリさせ、自分のやるべきことを把握しながらチームとしてケミストリーを起こし、仲間たちの良いところを引き出して行こう」という古賀京子ヘッドコーチのスタイルが開花しはじめた。「もし、シュートが入らなかった日があったとしても、シューターは打つことが仕事なので打ち続けなければならない。だから、思い切って打ちなさい」と下を向かせず、チャンスを与え続けたことで選手たちは自信を持ってプレーする。
2ガードの#45渡邉亜弥選手と#8川井麻衣選手、シューターの#4根本葉瑠乃選手のアウトサイド陣はいずれも得点力があり、インサイドの#24王新朝喜選手(188cm)と#15西岡里紗選手(186cm)は高さがある。それら先発メンバーに加え、控え選手の層も厚い。東京羽田との初戦は#9小菅由香選手が17点、#12風間緑選手も11点とベンチメンバーが二桁得点を挙げて勢いづけ、79-59で快勝した。古賀ヘッドコーチは「コートに出たときに何をすれば良いかが明確になってきた」と、シックスマンたちの「準備力」の向上に手応えを感じている。
「ベンチにいるときからしゃべっていないと、コートに入ったときにすぐ声を出すこともできません。今シーズンは試合前のアップの時から常に話すことをみんなが意識しており、それがコートでも出せているんだと思います」という渡邉選手。積極的なコミュニケーションにより、円滑なプレーが生まれる。昨シーズンは平均11.5本だったアシストは、20.6本(12月9日現在)とほぼ倍増した。プレーの精度が上がったことが結果として現れはじめており、選手の成長と自信につながっている。
4年目のポイントガード、川井選手が昨シーズンと見違えるほど落ち着いていると感じた。2ガードでコンビを組む渡邉選手も、「これまでは一緒にがんばろうって背中を押していましたが、今は川井が引っ張ってくれたり、自らプッシュして背中で見せてくれているので、すっごく安心感があります」というほど頼もしさが増している。また、王選手と西岡選手の高さあるインサイドコンビが身体を張ってくれることで、攻守に渡ってアウトサイド陣との良いリズムを作っていることも好調の要因だ。
選手同士の化学反応が起き、ディフェンスで明確となったチーム力
次節(12月15日-16日/大阪府・堺市金岡公園体育館)は、今の力が本物かどうかを試す女王JX-ENEOSサンフラワーズとの今シーズン初対戦となる。この2週間は山梨と東京羽田というトランジションの速い相手に対し、対策を練ってきた。同時にレベルや身長差はあるがJX-ENEOS戦を想定しながら練習し、試合で試しながら照準を合わす。渡邉選手は「胸を借りる気持ちで挑むだけ」と言うように、持てる力を全て出し切り、まずは自分たちの現在地を知ることが重要である。
負けても取り返すことができるのがレギュラーシーズンだ。次節を終わればWリーグは前半戦が終わり、オールスターブレイクに入る。JX-ENEOSとの2試合で得た成果と課題を約半月ある準備期間で修正することで、年明けからはじまる皇后杯ファイナルラウンドではこれまでとは違う景色が見られるかもしれない。
古賀ヘッドコーチが就任してから3年目を迎えた。「前任の山下(雄樹)ヘッドコーチ(現GM)が築いた土台があったからこそ今があります」と強化を継続してきたことが少しずつ実を結びはじめている。渡邉選手も「プレー自体は山下ヘッドコーチ時代と変わらない」と言い、長年にわたって土台を築いてもきた。そこに、古賀ヘッドコーチのエッセンスをプラスアルファし、「選手同士の化学反応が少しずつ起き始めてきた。それによってチーム力がディフェンスとして明確になり、自信を持てるようになってきた」。
皇后杯の前に行われる「Denka presents Wリーグオールスター 2018-19 in TOKYO」には三菱電機より、西岡選手と渡邉選手が選出された。3年ぶりの出場に対し、渡邉選手は「正直、ビックリしました」と目を丸くする。「いつもと違う雰囲気であり、ベンチの盛り上がりも全然違ったので、楽しみたいです」。
それが終われば年明け1月10日より、一つ目のタイトルを懸けた皇后杯ファイナルラウンドがはじまる。初戦の相手は、1ゲーム差で3位につくトヨタ自動車アンテロープス。「トーナメントなので、勢いに乗った方が勝つ要素が大きい。初戦のトヨタ自動車は個の力が高く、1on1で打開してくるチームです。私たちはチーム力で対抗し、勝利を目指します」という渡邉選手。もちろん、その先に見据えるのは「優勝です!」
文・写真 泉 誠一