シーズンの締めくくりという新しい付加価値が備わったWリーグオールスターは、今回も盛況のうちに終わった。2015-16シーズンに復活して以来初めて、馬瓜エブリンという天性のお祭り女が不在だったにもかかわらず、それに匹敵する1人として白鞘郁里(日立ハイテク)がついに脚光を浴び、石橋貴明氏来場のきっかけを作った髙田真希(デンソー)は平末明日香(トヨタ紡織)、江良萌香(富士通)とともに黒の全身タイツ(いわゆるモジモジ君)で登場し、渡嘉敷来夢(ENEOS)は目隠しでのフリースローを強要され、小田中涼子審判に至っては宮澤夕貴(富士通)からのパスを躊躇なく受け、一直線にリングアタックする暴挙(?)に出た。これでこそWリーグオールスターである。
筆者が秘かに注目していたのは、車いすバスケとのコラボだ。今回の会場となった有明アリーナは、B3リーグの東京ユナイテッドバスケットボールクラブが9295人もの入場者数を記録したことで知られるが、元は東京パラリンピックの車いすバスケの会場であり、要するに男子日本代表が銀メダルの快挙を成し遂げた場所。筆者としては前回のオールスターの時点で銀メダリストの競演を期待しており、快挙の舞台がオールスター開催地となったこのタイミングで実現の運びとなったことは実に喜ばしい。
髙田と宮澤の他に長岡萌映子、林咲希(以上ENEOS)、東藤なな子(トヨタ紡織)の5人が挑んだエキシビションゲーム。前半の5分はハーフコートの3対3で行われ、6-4と点差は開かなかったが、オールコート5対3への形式変更というハーフタイムでの髙田の提案は逆効果だった。ディフェンスではスピードに全くついていけず翻弄され、アウトナンバーを生かした速攻を出そうとしても、緩いパスにも手を伸ばすばかりで車いすを漕げず、ターンオーバーを連発。後半の5分間は13-4と大差がつき、トータル19-8で車いす男子チームの貫禄の勝利となった。
この日、東京パラ銀メダリストとして登場したのは豊島英と藤澤潔(埼玉ライオンズ)、宮島徹也(富山県WBC)の3人。そのうち豊島に関しては、東京パラを最後に現役を退き、現在は日本車いすバスケットボール連盟(JWBF)で男子のハイパフォーマンスディレクターという肩書を背負い、代表強化の先頭に立っている人物だ。キャリアの長い選手が多い車いすバスケ界では、現在でもまだ34歳という豊島の引退はいささか早すぎたようにも思うが、3度のパラリンピック出場を誇り、東京大会ではキャプテンも担っていた。この役職に就くのは自然な流れでもあるだろう。
現役選手として日本に初のメダルをもたらしてから約1年半という短さで、立場を変えて再び重責を背負っている豊島。今回この舞台に招かれたことを、このように振り返る。
「車いすバスケットボールを呼んでいただいて、知っていただける機会があったことがすごく嬉しいですし、今日初めて見ていただいた方にもぜひファンになっていただけたらと思います。なかなか交流する機会がなく、東京パラリンピックの後は初めてだと思うので、少し時間は経ちましたが、銀メダルを獲った選手がこの舞台に集まることができたのは良かったです。メダルを獲った思い出の地でもありますし、僕1人ではなくチームメートと一緒に戻ってきたことが嬉しいのと、自分が頑張ってきたことを振り返るきっかけにもなって、良い機会になりました」