Wリーグ3連覇を狙う富士通レッドウェーブにとって、開幕からの3週で3勝3敗という成績は不本意なものだっただろう。デンソーとのGAME2を落とすと、続くシャンソン化粧品とのGAME1は1点差で黒星。トヨタ紡織にもGAME2で敗れ、ディフェンディングチャンピオンとしては不安定な印象があるのは否めない。
第4週、アイシンとのGAME1も前半はわずか1点リードという難しい展開。しかし、後半は女王らしい戦いぶりを取り戻した。第3・第4クォーターともに失点は9点のみ。攻めても第4クォーターには26得点を挙げ、最終的には26点差をつける快勝となった。ディフェンスの強度を上げることで試合の流れを引き寄せたのは、日下光ヘッドコーチのコメントからもわかる。

「このアイシン戦に向けて選手たちに言っていたのはディフェンスの部分。前半はちょっと遂行が悪く、ただ、後半は富士通らしい激しいディフェンスができたので、今日の勝因はそのディフェンスかなと感じています」
昨シーズンの開幕戦では試合開始から21-0というビッグランがあり、チームの完成度は開幕早々から驚異的な高さだった。しかし、開幕からそこまでエンジン全開となるのはむしろ稀なケースであり、今シーズンに関しては富士通もまだ本調子というわけではない。そこにはおそらく、HCが代わったということも多少なりとも関わってくるだろう。その点は日下HC自身も認識しているところだ。
「今日を入れてまだ7ゲームという中で、チームもまだ乗りきれてない部分がありますし、そこは僕の責任でもあるので、ここから向かう方向性を明確に示す必要があると思って過ごしてきました。その中のポイントの一つがディフェンスだと思うので、ここをもう一回突き詰めて、ぶらさずにやっていきたいと思います」
コーチとなって8シーズン目の日下HCにとって、今シーズンは初のHC業。コーチとしてのキャリアを一貫して富士通で送っていても、これまでのアシスタントコーチとは職分も見られ方も全くと言って良いほど異なる立場だ。日下HCも「いろんな部分で責任の重さを感じますし、HCの言動一つでチームがコロッと良くもなれば、逆にあまり良くなくなることもあると思うので、その方向性を示さないといけないという難しさはあります」と、これまでとの違いを強く感じる日々。その意味では、試合を重ねることで日下HCは学びを得て、それがチームに良い影響をもたらすことになっていくはずだ。

そんな中で、日下HCにとって今後への分岐点になる試合があるとすれば、このアイシン戦はその一つかもしれない。相手には昨シーズンまでの富士通のHC、BT テーブスがいたからだ。それも、開幕からの2週はベンチに入っていなかったにもかかわらず、第3週でベンチ入りすると、この富士通との対戦の前にHC就任が発表されるという急展開。思いがけず “師弟対決” となったことに、日下HCは驚いたという。
「なんとも言えない感情でしたね。実は朝からすごくソワソワして、家族からも言われたくらいなんですけど(笑)、僕にとってはコーチとしてすごく成長させてくれた人がBTで、その人とまさかHC1年目で、しかもこんなに早く対戦するとは思ってなかったので、ワクワクもありソワソワもあり、複雑な感情でした。ただ、確かに気持ちが追いつかなかったというのはあるんですけども、今までは僕がベンチに座ってBTが立ってるのを見てたのが、今は僕が立ってて、相手のベンチを見たらBTがいる。それは新鮮でした」











