そのWリーグの選手が日本代表でも中心となるのは当然のことだが、2021年の東京オリンピックではトム・ホーバスHC率いる女子代表が銀メダルの快挙を成し遂げた。この事実は、審判としても誇りを感じ、この上ない喜びを得られるものだった。
「世界レベルの選手たちを目の前にして、一緒にコートに立って同じ時間を共有できるのは、本当にやってて良かったなと思います。オリンピックで本当によく頑張ってくれて、これでまた日本の女子バスケットが盛り上がっていくなという気がしました」(整)
「Wリーグの試合は貴重な時間でした。選手たちと同じコートに立てたことがすごく良かったです。東京オリンピックは本当に良いゲームだったし、日本中が応援して一つになれたと感じました」(諭)
審判は正確なジャッジを要求されつつ、40分、試合によってはそれ以上の時間を走り続ける体力も必要となってくる。それを考えると、55歳定年制というのはやむを得ない面はあるものの、各チームのコーチ陣から信頼を寄せられているのは、レフリーオブザイヤー複数回受賞という実績にも表れている通り。引退しなければならないのは惜しまれることだが、2人の表情は晴れやかだった。
「もう十分にやらせてもらいました。ファンの方にも応援していただきましたし、本当に良い時間を過ごさせてもらってありがたかったなと思います」(整)
「いろんな方に支えられてここまで来れたことに、本当に感謝しかないです。ありがとうございましたと、もうそれだけです」(諭)
最後に、2人で捌いたオールスター本戦で会心のジャッジがあったかどうかを問うてみたところ、あれほど盛り上げの一端を担っていたにもかかわらず、2人は「審判は脇役」の信条を貫いた。そんな謙虚なところも、2人が信頼を集めてきた理由なのだろう。
「何もしなかったのが一番ナイスジャッジだったかなと思いますね。目立たなかった、溶け込めたというのが一番です」(整)
「ナイスジャッジはないです。選手たちと仲良くやれるのが一番の楽しみでしたし、乗っかってくれた選手たちに感謝してます」(諭)
双子という話題性も手伝ってか、ファイナルの際にはリーグ公式SNSでも引退について取り上げられたほど、影響力を持っていた2人。Wリーグの発展に少なからず寄与した功労者であり、後に続く者が現れることを期待したい。
文・写真 吉川哲彦