「私としては、皇后杯はあまり納得のいく試合じゃなかったんですけど、そこから気持ちを切り替えて、残りの試合に向けて気持ちを立て直すことができたので、自信も持てるようになりましたし、コートに立ってるか立ってないかというのはあまり気にしてなかったんですけど、こういう重要な局面でコートに立てたことは嬉しいし、これも自信に変えていきたいです」
試合開始から富士通に0-21のビッグランを許したリーグ開幕戦に始まり、皇后杯準優勝、入替戦出場とアップダウンの大きいシーズンを過ごしたアイシン。それもまた、平末は成長の材料に変えようとしているところだ。
「大差で負けた試合が何回かあって、自分たちでヘッドダウンしちゃって良くない雰囲気になってたんですけど、そういうときにコートの中でも外でもムードメーカーとしてみんなを盛り上げられるようにできることが、自分には何かあったんじゃないかなって思います。でも、それを学べたのは大きかったので、来シーズンはしっかりチームを盛り上げて、アップダウンの少ないチームになって帰ってきたいと思います。メンバー的にももっと上を目指せると思うので、もっと結果にこだわってやっていきたいです」
どんなシーズンであって、選手は成長を期して臨むものだ。移籍の道を選んだとなれば尚更のこと。平末も、アイシンに移籍してきた今シーズンの時点で得られたものはあった。選手としての成長は、出場時間やスタッツが伸びることばかりではない。
「自分より年下の選手が多かったし、年上の選手はすごい経験をされてきた選手がいた中で、プレータイムがあってもなくても自分の気持ちを切らさず、保てるようになってきたのはすごく成長したかなと思う部分です。前はすぐに自信をなくしちゃってたんですけど、今シーズンはそういう気持ちの波があまりなかったかなって」
時計の針を入替戦の前に戻すと、レギュラーシーズン最終週まで順位を争った相手は、古巣のトヨタ紡織であった。もちろん、アーリーエントリーも含めると5シーズンを過ごしたチームへの思い入れは強く、自動残留か入替戦出場かという瀬戸際のせめぎ合いを古巣と、しかも移籍初年度で繰り広げたことについては「めちゃくちゃ複雑でした」と振り返る。ただ、最終順位が決まったレギュラーシーズン最終戦の日、争う相手が昨シーズンまでともに戦った仲間だったがゆえに生まれた感情もあった。
「紡織の試合も見てたんですけど、勝たれると困るし、でもやっぱり、勝った紡織のみんなが喜んでるのを見るとグッとくるものがあって、泣きそうになりました。そういう姿を見て、『これはもう残留するしかないな」という気持ちにもなったし、やっぱりみんなの頑張りで自分も頑張れる。複雑ではあったんですけど、相手が紡織で良かったなと思いましたね」
精神的支柱にもなった渡嘉敷について「ついていくだけでした」と語る平末だが、全ての経験を成長の種にしようというメンタリティーは渡嘉敷に近いものがある。来シーズンはどのような成長見せてくれるだろうか。
文・写真 吉川哲彦