「どうやったら勝てるのか」を伝え続けた勝者のメンタリティー
昨シーズンの優勝に対し、ENEOSから移籍してきた優勝経験豊富な宮澤や林の功績だと生え抜き選手たちは考えていた。宮澤自身も、「今まではベテランについてきている感じがありました」と認めている。しかし、皇后杯の優勝の立役者となり、ベスト5を初受賞した内尾聡菜や、勝利に導く3ポイントシュートを決めた江良萌香を筆頭に、意識の変化が見られている。「自信を持ってコートに立ってくれています。今は自分から得点を取りに行くなど、気持ちが強くなったことを一番感じていて、それがプレーにも現れています」と宮澤もその変化を歓迎する。チームの起点であり、得点源となる町田瑠唯や宮澤のマークが厳しくなる中でも、「江良や内尾、赤木(里帆)、(ジョシュア ンフォンノボン)テミトペらがリングに向かってプレーしています。ディフェンスでも、しっかりがんばって仕事をしてくれています。チーム全体の力が上がったなってすごく感じています」。だからこそユナイテッドカップでは、宮澤が名前の挙げた選手たちが中心となって、頂点へ牽引して行くことが次のステップである。
宮澤が富士通に移籍してきて4年。「どうやったら勝てるのか。大事な場面や大事な部分、一つひとつのプレーのどこが大事なのかをずっと伝えてきました。それが、移籍する前に感じていた富士通の弱さでもありました」と勝者のメンタリティーを植え付け続けてきた。移籍当初は小さなミスが多く、球際の競り合いにも勝ちきれない。ゆえに、結果につながらない原因であることも分かっていた。それらを一つひとつ宮澤が指摘し、アドバイスを送ってきたことで、チームは大きく変化していった。
「昨シーズンから誰かががんばるのではなく、みんなでがんばるようになりました。それによってチームとして力がついてきました。他のチームは1on1が強かったり、誰か1人が上手かったりします。富士通も一人ひとりの力は強いかもしれないですが、それを5人が一緒に発揮できるときはどこよりも強い。その自信があり、みんなもそれは感じています」
ENEOSで優勝し続けていたときも、東京オリンピックで銀メダルを獲った後も、満足することなく常に課題を先に挙げてきた。しかし、富士通を頂点に導いた宮澤は、これまでとは違った表情や感情を見せた。
「昨シーズンは本当に報われたなって感じました。今までいろいろがんばってきて、今いる富士通の選手たちは優勝経験がない選手ばかりだったので、本当に優勝したい気持ちが強かったです。最後のファイナルを良い形で終わることができ、確かに課題もあったんですけど、それよりも『みんなよくがんばったね』といううれしさの方が大きかったです」
今シーズンも笑顔で終えるために、キャプテンはストイックに仲間たちの背中を押し続ける。
文・写真 泉誠一