これまでも武器としてきた「ドライブやジャンパーは、テミ(ジョシュア ンフォンノボン テミトペ)とは違う得点の取り方で、チームに影響を与えられるようにがんばりたいという思いです」と持ち味を発揮する。藤本はシックスマンとして、センターのジョシュアを休ませるのが役割のひとつ。サイズもプレースタイルも違うことを利点とし、「自分が出たときは機動力を武器に、相手を嫌がらせることを意識しています。テミとは違うオフェンスをして、自分の良さを出していきたいです」と自信を持ってゲームに変化をもたらせる。それが、トヨタ自動車との2戦目で前半終了間際のブザービーターにつながった。
さて、「やっちゃいました…」と反省する後半。第4クォーター開始早々にフリースローを2本とも外し、次のポゼッションではターンオーバーをして空回り。流れが相手に傾きかけたところで交代を告げられた。しかし、藤本のハッスルプレーが今シーズンの富士通にとっては必要であり、積極的に行ったからこそフリースローをもらえた。その内容も無我夢中でドライブをしたわけでもなく、ディフェンスの動きを見て確信を持って仕掛けていた。「やりたいことは表現できたとは思います。フィニッシュは別にして…」と良くも悪くも反省しながら、強固な信頼を勝ち取りに行く。
ENEOSサンフラワーズでの経験と実績をチームに植え付け、昨シーズンの優勝へ導いた宮澤夕貴と林咲希の存在は大きい。「言葉ではなく、日頃の行いから学ぶことが多いです。日々、一番練習している姿を見て、さすがだなと思いましたし、自分たちも真似してワークアウトを必死に取り組んでいます。自分たちよりも下の選手には言葉で伝えてくれていますが、中堅の私たちは行動から学んでいます」という先輩たちの背中が富士通のスタンダードを引き上げていた。
アーリーエントリーを含めて6シーズン目となる藤本も、富士通で築きあげてきたベースがある。「チームルールについては、移籍してきた選手たちよりも自分たちの方が理解しています。移籍してきたベテランから経験を話してもらいながら、富士通のルールについては私たちから伝えることができていました。それによって、すごく良いコミュニケーションが取れていました」と振り返り、優勝に向かって行くチームのために貢献していた。
あらためて昨シーズンの優勝に対する反骨心とともに、少なからず自信に変えて、今シーズンこそチームの輪の中心で笑いたい。そのためには、健康第一が絶対条件である。
文・写真 泉誠一