発足から四半世紀が過ぎたWリーグにおいて、ENEOSはリーディングチームであり続けた。その功績は冒頭で触れた通りだが、リーグ戦・皇后杯ともに優勝できなかったのは2007-08シーズン以来16シーズンぶりのことだった。その間は、リーグ戦と皇后杯の少なくとも一方で頂点に立っていたのである。渡嘉敷と岡本の貢献度の高さは特記するまでもないことだが、高田は「タク(渡嘉敷)さんとレア(岡本)さんが抜けたから弱くなる、というのは違う」と言い、ENEOSはENEOSらしさを持ち続けなければならないと考えている。それは結果を出すということ以上に、強豪チームが持っているカルチャーを守ることが大切ということなのだろう。
「タクさんとレアさんがいたときから全員が自主練も頑張っていたので、誰が出ても強いというのがENEOSのあるべき姿だと思います。タクさんとレアさんが抜けたとしても、ENEOSは今まで通り伝統のある、勝ってきたチームとして、新しいメンバーでも勝っていきたいです」
宮崎のみならず、高田にも舞台は違えどオリンピックのコートに立つチャンスはあった。直近は3×3の日本代表に選ばれ続け、ここでもチームを牽引する存在となっていただけに、世界最終予選で敗退したことは、高田にとっても悔しさが募る出来事だった。今シーズンのWリーグは、その悔しさを少しでも晴らす機会にしたい。その意味で、責任ある立場になったことは高田にとって良い方向に働いた。
「引きずったところはあったんですけど、終わってからは少し休みももらいましたし、チームに合流してからは一番上として引っ張らなくちゃいけないと思って切り替えられたところがあります。オリンピックには出たかったですけど、負けてしまったのはしょうがない。年齢もそんなに若くないですし、1年1年全力で頑張るだけだと思ってます。自分としてはチームを引っ張って、勝利に貢献できるプレーヤーになるということと、ENEOSも昨シーズンは無冠だったので、もちろん目指すは2冠。でも、まずはリーグ戦と皇后杯の1戦1戦をしっかり勝ちきれるチームになっていけるようにと思います」
一昨シーズンにリーグ女王の座を取り戻しながら、再び群雄割拠の波に飲まれる形となったENEOS。今シーズンは富士通やデンソー、トヨタ自動車だけでなく、渡嘉敷と岡本の移籍先であるアイシンもENEOSに牙をむいてくるだろう。過去には濱口典子と大山妙子、楠田香穂里という日本代表の主力が一度にチームを去り、あわやシーズン負け越しというところまで勝率を落としたこともあった。その二の舞を避けるには、高田のリーダーシップも少なからず必要となってくる。
文・写真 吉川哲彦