オールスターは各チームから多くの選手が集まるため、メディア側の人間にとっては通常の試合に比べて非常にチャンスが多い。といっても、Bリーグに関しては富樫勇樹(千葉ジェッツ)がたかいたかいダンクでMVPを受賞した初年度しか取材したことがない筆者にとって、この場合のオールスターとは専らWリーグの話だ。2015-16シーズンの復活後に限れば全ての大会を現地取材している筆者は、初の愛知県開催となった2023-24シーズンのオールスターも2日間取材に訪れた。
Wリーグはここ数回、ルーキーが一堂に会するフレッシュオールスターも開催しているとあって、集まる選手の数はさらに多くなる。筆者個人の話で大変申し訳ない限りだが、今シーズンは当媒体でWリーグの14チーム中9チームを既に取り上げており、このオールスターは残り5チームのいずれかの選手で記事にできればと考えていた。その中で、フレッシュオールスターで筆者が選んだのは、プレステージインターナショナル アランマーレの松永夏海である。
昨シーズン半ばにアーリーエントリーでアランマーレの一員となった松永は、白鷗大の出身。松永の卒業後の昨年度は6年ぶりにインカレを制覇した強豪とあって、Wリーグには毎年選手を送り込んでおり、今シーズンのルーキーは松永の他に鈴置彩夏(ENEOS)と大村早和(アイシン)がいる。当然ながら3人揃ってフレッシュオールスターに出場したが、出身地によって東西に振り分けられたため、北海道出身の松永は愛知県出身の鈴置、長崎県出身の大村とはチームが分かれてしまった。それでも、松永にとっては良い思い出になったようだ。
「最初は『一緒だったら良かったな』ってちょっと思ったんですけど、これからもどこかでやる機会はあるのかなって思いますし、マッチアップするのも楽しかったので、同じコートに立てたことが嬉しかったです」
試合自体も、松永は楽しむことができた。王新朝喜ヘッドコーチ(三菱電機)が用意したセットプレーをキャプテンの石牧葵(姫路)を中心にしっかり共有しつつ、リーグ戦さながらに積極的に走ることを意識。躍動感のあるプレーを心がけたことが、楽しさを生んだ。
「チームとしては楽しくやって盛り上げていこうという感じでした。相手チームが強い人たちばかりだったので、最初は点差がついちゃったんですけど、走ろうということをワンさん(王HC)から言われてたし、みんなで走ってリズム良くスピード感を持ってやっていこうとして、すごく楽しかったです」
第3クォーターには、ドリブルカットからワンマン速攻でレイアップも決めてみせた。自分らしさを表現できたという感触も得ることができた。
「私はディフェンスから徐々に自分のプレーを出していくというのでリズムを作ってきたので、チャンスがあればと思って狙ってました。そのチャンスがあって良かったですし、走るバスケットを今までずっとやってきたので、それを出せたかなって思います」
松永自身が振り返ったように、試合は西軍のリードで推移し、第3クォーター終了時には29点差がついていたが、第4クォーターは東軍が猛烈に追い上げ、残り約1分となったところで11点差まで詰まった。結局そのまま試合は終わったものの、東軍としても見せ場は作った格好。ラストスパートを任され、残り2分20秒でコートに立った松永も、試合終了の瞬間をコート上で迎えることができた。