少し前までは “絶対女王” と言われたENEOSも、2シーズン続けてトヨタ自動車にリーグ優勝を譲り、昨シーズンはその座を取り戻したものの、今シーズンはデンソーに敗れて皇后杯連覇が途切れた。今シーズン、リーグでの2敗は富士通とシャンソン化粧品に喫したもので、過去に無敗で終えたシーズンもあったことを考えると、盤石とは言えない状況だ。早稲田大時代にユニバーシアード日本代表に選ばれ、銀メダル獲得に貢献した中田がENEOSに入団したのは、リーグ12連覇を逃した2020-21シーズン。そのときは皇后杯で渡嘉敷が大ケガを負いながらも、今回と同様に中田がスターターに入った結果、優勝を果たしているが、中田が過ごした過去3シーズンは必ずしも “無敵” と言えるチームではなかった。
「私も、入る前は『またENEOSかー、すごいなー』と思ってたんですけど、私が入った1年目は渡嘉敷さんがケガして、たぶんどのチームも『今なら勝てる』と思っただろうし、2年目と3年目も2冠はできてないので、以前のようなENEOS一強時代ではないと思います。もちろん勝ちにいきたいし、リーグも皇后杯も優勝したいけど、ENEOSから富士通に移籍した選手が3人いたりして、いろんなチームがレベルが上がっている中で、勝つのは当たり前じゃないし、『勝たなきゃ』というプレッシャーを感じる余裕もないです。みんなも、自分たちは挑戦者の立場だと思いながらやってると思います」
それでも、「甘くないのはわかってるけど、今までの歴史とかプライドがあるからこそ、私たちは勝たなきゃいけないチーム」という勝利への使命感は、やはりENEOSでプレーしているから生まれるものだ。在籍4シーズン目となり、3×3日本代表として活動してきたことなどもあって、順調に成長してチームに必要とされる存在になっているという実感もある。
「1年目は渡嘉敷さんがケガをして、自分はわからないことも多い中でENEOSを背負わなきゃいけない難しさがあったし、2年目は自分の立ち回りとか、外のプレーも求められる難しさがありました。今は4年目にして、ENEOSのバスケットをしながら自分に求められてることや良さを出せるというのが少しずつわかってきたかなと思います。このサイズにしてはスピードがある、跳べるというのが強みだと思ってるんですけど、3人制をやって海外の選手とマッチアップする機会も増えたのは、スキルアップというか引き出しが増える良いチャンスだなと思ってます」
チームにおける自身の存在価値や、トップカテゴリーでプレーする選手としての責任を強く意識している中田は、この先さらに重要な存在となっていく。残るリーグ戦とその先のプレーオフで、中田はENEOSのキーマンになるだろう。
「自分が1年目のときは、自分がダメなときに周りの経験ある選手がサポートしてくれてやりやすかったです。今はもう中間の立場で、自分より若い子が試合に出ることもあるから、もうちょっと支えてあげないといけないし、1年生みたいにやってちゃいけないなって(笑)。難しいところですけど、そこは頑張っていこうと思います。
ENEOSは歴史あるチームで、その一員として戦えることも当たり前じゃないし、今回大きい地震もあった中で普通に生活してバスケットができてるのは幸せなことなので、何事も当たり前に思わず、自分のやるべきこと、求められてることをやり続けるのが選手としての使命なのかなって思います」
文・写真 吉川哲彦