「移籍とか新人とか関係なくみんな仲が良いし、ただ仲が良いだけじゃなく、信頼を積み上げてきたという自信があります。先輩方も経験がある分、締めるところをしっかり締めてくれるのはさすがだなと思うし、意見交換したいときにまず受け入れる姿勢から入ってくれる。いろいろ相談させてもらって、ああしようこうしようというのを話し合えてるので、たくさん頼っちゃってます(笑)。上の人たちがそういう雰囲気を作ってくださってるから、下の子も何かを言いにくいというのがなくて、本当に良いチームだと思います」
開幕戦に敗れた直後のロッカールームでは、誰からともなく「みんなでやってきたことをやれば勝てる、それを証明できる試合だった」という言葉が出たという。常にポジティブな発言を心がけてきた星澤も、「ちょっと悪い流れのときでもプラスの言葉しか出てこないし、『まだいけるよ!』とか『ここ1本守れるよ!』という声が、私だけじゃなくてみんなから出てくる」という前向きな姿勢を、今シーズンのチームには今まで以上に感じられるということだ。それもやはり、「ヴィッキーズには下を向く人もあまりいないんですけど、私自身暗い雰囲気が得意じゃないというのもあるので、試合や練習でそうならないように、1日1日を全員で明るく乗りきっていけるように」という星澤がキャプテンになったことで、チーム全体がポジティブマインドをより強く持つようになった結果に違いない。
そして、星澤がキャプテンを務めることに関しては、萩原美樹子ヘッドコーチも太鼓判を押す。
「今シーズンはケガが格段に減りましたし、自覚を持って取り組んでくれていて、練習中の声かけとかもただ『頑張ろう』だけではなくなりましたね。この1年ですごく成長したと思います。彼女自身にとってもチャレンジだと思うんですけど、昨シーズンは力を出せなくて後悔したということも言っていて、そういう意味でもキャプテンの人材としてうってつけだと思うので、ヴィッキーズを引っ張っていってほしいです」
シャンソン化粧品をホームに迎えた第2週、東京羽田は第1戦を落としたが、終始クロスゲームとなった第2戦は最後まで集中力が切れることなく、熱戦を3点差で制して今シーズン初勝利を挙げた。勝負の第4クォーターで星澤は出番がなかったが、ベンチから常に声を出し続けてチームメートを鼓舞。昨シーズン、まさかの大逆転負けを喫した際には悔し泣きする姿も見せた星澤が、今回の勝利の直後に見せたのはもちろん嬉し涙だ。
そして、大田区総合体育館に詰めかけたファンの応援もチームを力強く支えた。Wリーグ開幕会見を「ファンの方と触れ合いながら楽しめる新しい形の会見で、その場に参加できたのは嬉しかった」と振り返り、ニュートラルゲームだったブレックスアリーナ宇都宮での開幕戦でも「『関東は全部ホームゲームですか?』っていうくらい来てくださった。声も出せるようになったから、ホームゲームはもっとすごいことになると思う」と語っていた星澤の期待にファンが応え、そのファンの後押しにチームが応えた。「ファンの皆さんのためにも、自分たちのバスケットボールをして勝ちにいきたいと思います」という星澤は、どんなときでもチームメートの背中を押し、自らもファンに背中を押されて走り続ける。
文・写真 吉川哲彦