2023年10月14日、ブレックスアリーナ宇都宮。Wリーグ2023-24シーズンの開幕戦で、吉田亜沙美はコートに帰って来た。アイシンウィングスから衝撃の発表があったのが4月20日。それから約半年の間にサマーキャンプとオータムカップがあったが、いずれも吉田は出場していない。Wリーグのコートに立つのは、途中で打ち切りとなった2019-20シーズン以来のこととなる。
3シーズンのブランクを感じさせず、復帰戦としてはまずまずの出来と言っていいだろう。吉田は第1クォーター残り1分50秒にコートイン。その18秒後にはプルアップでジャンプシュートを狙ったところでファウルを受け、フリースローを2本しっかり決めてみせた。結局この日は12分53秒プレーし、得点はその2点だけだったが、アシストは4つ。吉田らしいプレーは垣間見ることができ、梅嵜英毅ヘッドコーチも「普通にやってくれたなと思います」と概ね満足している様子だった。
吉田に声をかけ、現役復帰を促した張本人である梅嵜HCとしては、やはり吉田がチーム全体に良い影響を与えることを大きく期待している。ただし、練習を重ねてきたとはいえ、吉田がどのようなプレーをするかということは、実際の試合でなければわからないこともあるだろう。この日は65-92でシャンソン化粧品に完敗。吉田と一緒にプレーするという経験が、アイシンの他の選手にはまだ十分でない。
「周りの選手たちがその状況下に完璧に慣れているわけではないので、一瞬でも目を切ってしまうと良いパスが悪いパスになってしまって、その点は吉田がかわいそうでした。復帰戦なのにこういうゲームになってしまったのは申し訳ないし、選手たちもそれは感じてくれていると思います」
吉田ほどの実績の持ち主がコートに立つと、残りの4人の意識が変わるのはある意味では仕方のないことだ。良いほうに意識が変われば問題ないが、そこに至るには多少なりとも時間が必要なのも確か。この日はボールも人も動きが止まってしまうことが多々あり、フロアバランスを気にした吉田が大声で指示を出す場面もあった。それもやはり、練習と試合を積み重ねて改善していくしかないだろう。
「吉田がいるとみんな安心感が出てしまって、動かなくなるというのは確かにあると思います。吉田はチームのエンジンでもあるし、駒でもある。吉田がいることによって周りの選手がどれだけ動いてくれるかですね。吉田は見てくれてるし、パスを出してくれてるので」(梅嵜HC)
前述したように、吉田の出番が訪れたのは第1クォーター終盤。ポイントガードのスターターを酒井彩等が務めるのは昨シーズンと同じだが、今シーズンはその酒井を下げる際に吉田が代わってコートに入るローテーションになりそうだ。
「梅嵜さん的には残り3分くらいから出るというストーリーだったと思うので、今日は酒井が早めに2つファウルしちゃったのでもう少し早くなるかなと思ったんですけど、セオリー通りかなと思います」