「普通に『終わりです』って言われたんです」と笑みを浮かべながら語るその表情は、どこか吹っ切れたようにも、逆にプレーすることにはまだ少し未練があるようにも見えた。日立ハイテク退団、そして引退の経緯について、鶴見彩はこう振り返る。
「いろんな選択肢はあったんですけど、次に行きなさいっていうことかなと思って終わりにしました。シーズンの途中にアーリーエントリーで同じポジションの子が入ってきた時点で、自分の中では『次のことを考えないといけないな』というのはあったので、プレーでもプレー以外でも自分ができることをやりきろうという気持ちで過ごしていて、やれることはやったかなという気持ちはありました」
Wリーグでの最後の舞台となった4月末のオールスターの前に、鶴見は引退を決意していた。既に公式に引退を発表していた選手はそこでセレモニーも開催されることが決まっており、鶴見も打診は受けたものの最終的には見送られ、オールスターを終えた後に自身のSNSでWリーグからの引退を発表している。
それから4カ月弱、鶴見が久しぶりに公の場に登場したのが、埼玉・川越市で開催された埼玉BBドリームカップだ。鶴見は楠田香穂里ヘッドコーチ率いる国体成年女子チームの一員として、ユニフォーム姿を披露。Wリーグ選抜とのエキシビションゲームでは、少し前まで対戦相手として相まみえていた選手たちと触れ合い、終始笑顔でプレーした。
「辞めるタイミングで楠田さんと桶本(正・埼玉県国体成年女子監督)さんからご連絡をいただいて、やらせていただけるんだったら区切りとしていいかなって。そしたらミニ国体の対戦相手が自分の母校(白鷗大、栃木県国体チーム)になって、これもすごいことになったなって(笑)」
鶴見は、この国体チームが5人制での最後のプレーと決めていた。Wリーグからの引退を決断したのも、3×3への転向が頭にあったからだ。初めて興味を持ったのは一昨年の東京オリンピック。5人制の応援のついでのつもりでテレビ観戦したところ、一気に引き込まれたそうだ。
「コーチがいなくて、選手だけでグッと集まってああしようこうしようってやってる姿が、めちゃめちゃ人間っぽいなって。すごく魅力的に見えて、やってみたいっていうスイッチがバンって入りました」
その後、同い年の桂葵(ZOOS)から「どこかのタイミングで一緒にできたらいいね」という言葉をかけられたこともあるそうだが、今もまだ本格的には3×3に取り組めておらず、所属チームは決まっていない。しかし、「あと5年くらいはプレーしたい。『やりたいな~』というよりは『やりたい!』っていう感じなんですよ(笑)」と、かなり本気だ。そこには鶴見自身のライフプラン、将来のビジョンも関係してくる。