シーズンの締めくくりという新しい付加価値が備わったWリーグオールスターは、今回も盛況のうちに終わった。昨シーズンに続き、出場選手が開催前に現役引退を発表したケースが今シーズンも発生。彼女たちにとっては、この祭典が最後の花道を飾る舞台となったわけである。事前に発表こそしていないものの、内心では引退を決めていた選手も、この機会を楽しみにしていたことだろう。
新潟アルビレックスBBラビッツの北川直美は、既に引退を発表していた2人のうちの1人(もう1人は富士通・田中真美子)。日本代表クラスの選手がいない新潟はオールスター本戦に1人しか選ばれないことが多く、北川はこれまで井上愛や宮坂桃菜といった当時の大黒柱を送り出す立場だったが、今回ようやく出番が巡ってきた。最初で最後となった舞台を、北川は存分に楽しんだ。
「最後に素晴らしい選手たちとこうしてコートに立てたことがすごく嬉しかったし、幸せでした。こんなペーペーの私が(笑)こういう機会をいただけて、すごく光栄なことです。なかなか一緒にやりたくてもできない選手が多い中で、一緒にコートに立てることは私の財産になりますね。最初は本当に緊張したんですけど、最後だからやっぱり楽しみたいなと思ったし、こうして素晴らしい選手たちとプレーできるのってすごいことだなって思いながら、最後は本当に楽しませてもらいました。引退を表明してからは全然動いてなかったんですけど、ブースターさんにプレーをお見せできて良かったです」
北川は2017-18シーズンに新潟に入団し、ルーキーイヤーから主力として活躍してきた選手だ。6シーズン目の今シーズンは初めて全試合に、それも全てスターターとして出場。インサイドを担う選手としてはアンダーサイズだが、40分フル出場で体を張り続けた試合も度々あり、1試合平均12.5得点をマーク。過去の5シーズンは全て6点前後で、キャリアハイも2019-20シーズンの6.2得点だったので、一気にその倍まで数字を引き上げたということになる。
これだけの活躍を見せた以上、当然ながら来シーズンも新潟にとっては必要な戦力だったはずであり、ブースターも大きな期待を寄せていたに違いない。しかし、北川は初めて選出されたオールスターを前に、引退を決断する。度々大きなケガに見舞われてきた中、1試合も休むことなくコートに立ち続けるシーズンを過ごせたことで、達成感に近いものを得られたという側面は少なからずあったようだ。
「正直、悩みました。葛藤もあったんですけど、これまでは何回も大きなケガをしてきて、今シーズンは初めてケガをすることなく1シーズンプレーできたので、やりきれたというのはありました」
ただし、それが唯一にして最大の理由というわけではない。北川はこの4月から母校・日本体育大学のアシスタントコーチとなり、オールスター前には既に指導者としての道を歩み始めている。その誘いを受けたことが、引退を考えるきっかけになった。