現役時代は選手として多くの戦いを経験してきた鵜澤も大神も、ヘッドコーチとしてはルーキーである。トヨタ自動車に続いてファイナル進出を決めたENEOSサンフラワーズの佐久本智ヘッドコーチもまた、今シーズンはじめて指揮を執っている。チームとしてはプレーオフ常連であり見慣れた顔ぶれだが、熱きルーキーヘッドコーチたちの戦術戦略がWリーグ新時代を切り拓いている。
チャンピオンチームとしての重責をシェアするキャプテン3人体制
途中でヘッドコーチが代わり、多くの選手が離脱する苦しいシーズンだったシャンソンにとっては、悔しい結果とともに手応えも感じられている。先発のパレイはルーキーであり、大活躍のイゾジェは高校卒業したばかりのアーリーエントリー。3年目の金田愛奈はこれまで16試合しか出場経験がなく、プレータイムは5分にも満たない程度だった。キャプテンの小池は、「これまでなかなか試合に出られなかった選手たちが、活躍してくれました。また、試合ごとに活躍する選手が違っていたのもすごく良かったことです。そこは自信にもなったので、来年こそこの負けを無駄にしないように、もっとステップアップしていきたいです」とチームを引っ張る。昨シーズン、同じくセミファイナルで敗れたときの記者会見で涙を見せた𠮷田舞衣だったが、今回は毅然としていた。
「苦しかったんですけど、みんなとならば大丈夫だと思えたし、ここにいる鵜澤ヘッドコーチと小池キャプテンについて来て良かったと本当に思えるチームでした。みんなと一緒に戦えたことが、自分にとって良かったです」
3連覇を目指すトヨタ自動車は、平均23.5歳とさらに若い。今シーズンは山本、馬瓜、川井麻衣のキャプテン3人体制を敷く。チーム最年長とはいえ、4月11日に27歳の誕生日を迎える川井は、「まさかこんな若くしてキャプテンになるとは思ってなかったので、ちょっと抱え込みすぎてしまいそうなところもありました」と吐露する。
「苦しくても逃げずに前を見て、その中でも何か成長できると思いながらいろんな問題をクリアしてきました。チームとして負けることもありましたが、そこから目をそらさずに逃げないで話し合って、自分たちで打破しようと向かっていけたことですごく成長できました」
同じくキャプテンを担う山本も「先輩方が抜けて、本当に若いチームになったので3人体制で良かったなと思っています」と言い、チャンピオンチームとしての重責をシェアできる環境に助けられた。
「一人で抱え込まずに、川井選手と馬瓜選手と一緒に話してここまでチームを作って来ることができました。最初の頃はチームのことを考えすぎて、自分のプレーがあまりうまくいかないこともありました。でも、後半戦になるに連れて、自分でしっかり責任持ってプレーするときとキャプテンの役割のメリハリをつけられるようになり、そこは成長できた部分かなと思います」
一気に経験値を積み上げることができたトヨタ自動車が、勢いに乗ったまま4月15日からはじまるファイナルへと向かって行く。
文・写真 泉誠一