ちょうど10年前(2012-13シーズン)、シャンソン化粧品シャンソンVマジックから三好のWリーグでのキャリアがはじまった(※2017-18よりトヨタ自動車でプレー)。デンソーアイリスにアップセットして勝ち上がってきたシャンソンに対し、「自分にとって最後となるプレーオフの舞台で、古巣と当たるのも何かの運命なのかな」と思ったそうだ。当時ともに戦ったメンバーはもういない。新たなシャンソンの印象は「速くておもしろいバスケをするチーム」。仲間や恩師はいなくなったが、支え続けているファンにとっては感慨深い試合になったことだろう。
ファイナルへ向け、「三好選手の花道を作るためにも…」と言いはじめた馬瓜ステファニーだが、隣にいる三好を気遣い「あまりプレッシャーをかけてはいけないので」と言葉を遮った。三好の引退発表は、団結力が強みのトヨタ自動車をさらに強固なものにしている。
「自分たちの目標はまだ終わっていない」町田瑠唯
東京オリンピックで18アシストの新記録を樹立した町田瑠唯が、アメリカへ渡る発表をしてから約2ヶ月が経った。町田を見ようと多くのファンが会場に押し寄せ、そのプレーを目の当たりにすることで、さらに魅了される。
5位の富士通は、プレーオフ1回戦となるセミクォーターファイナルから登場し、すでに4試合を戦ってきた。日立ハイテククーガーズ戦は17アシスト、続くトヨタ紡織サンシャインラビッツとのクォーターファイナルでも11アシストと、パスをさばいてチームを勝利に導く。しかし、ENEOSサンフラワーズとのセミファイナルは、ギアを入れ替えるように2試合とも13点を挙げてファイナル進出を決めている。ディフェンスが寄ってくればパスで味方を活かし、少しでもスペースが空けば自らゴールを奪う。相手にとっては読みづらいミスティック(神秘的)なプレーが、世界が認める町田の武器である。
オフェンスに目を奪われがちだが、ファイナルまで勝ち進んできた大きな要因として、町田はディフェンスの成長に言及する。「ディフェンスでしっかりガマンができることや昨シーズンよりもリバウンドを取りきれるようになったことでセカンドチャンスをやられないようになったのは大きい」。昨シーズン、セミファイナルで敗れたトヨタ自動車戦を振り返り、「大事なところでシュートを決めきれなかったり、リバウンドを取りきれなかったりしたが、今シーズンはそこが改善されています」と自信を持ってファイナルを迎える。
6年ぶりにたどり着いたファイナルの舞台であり、富士通として経験しているのも町田と篠崎澪の2人しかいない。セミファイナルでENEOSサンフラワーズの壁を乗り越えたあと、コート上の選手たちは思っていたほど喜んではいなかった。
「長かったですし、この6年間はクォーターファイナルやセミファイナルからなかなか抜け出すことができませんでした。ファイナルの舞台に立てることがうれしいです。でも、自分たちの目標はまだ終わっていないので、ファイナルの舞台をしっかり楽しんで、チーム一丸となって優勝を目指していきたいです」
4月16日と17日には、公式応援ソング「ロック★with you」を引っ提げてフィロソフィーのダンスがファイナルに登場する。その熱いパフォーマンスも見逃せない。
文・写真 泉誠一